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姫野和樹は世界最高峰のSRでも輝けるのか 7年前に気づかされた“怪物の真価”

昨秋のW杯では日本代表のベスト8進出に貢献した【写真:Getty Images】
昨秋のW杯では日本代表のベスト8進出に貢献した【写真:Getty Images】

7年前のNZU戦で見せた“セオリー無視”のトライ

 記者として、姫野の潜在的な能力に初めて触れたのは、2013年4月30日のU20日本選抜―ニュージーランド学生代表(NZU)だった。すでに愛知・春日丘高の“怪物”として花園でパワフルなプレーは見ていたが、NZU戦での1つのプレーで真価を見ることができた。

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 後半20分の敵陣ゴール前の密集戦。主将としてLOで先発出場した姫野は、密集最後尾から相手防御が居並ぶ状況にも関わらず密集サイドに突っ込んだのだ。サイズでもフィジカル面でも相手が上と思われる状況では無謀かと思われた選択だったが、姫野は襲い掛かるタックラーをこじ開けるようにインゴールに飛び込んだ。

 このプレーが証明したのは、まだ日本の大学レベルでのフィジカルバトルさえ経験していない19歳の少年が、ラグビー王国のエリート学生に負けない、見た目以上の強靭な筋力や体幹を持っていたのと同時に、自分の秘められた能力を理解し、生かすプレーを選択ができるだけの強い意志を持ち合わせていたことだった。セオリー通りの選択なら、サイドを突いてラックを作りボールを継続するのが妥当だったが、姫野のトライを取りにいく選択に迷いはなかった。

 帝京大時代は、怪我も影響して猛威を見せる時間は限定的ではあったが、制約のない中でプレーをしていた。選手個々に、そして組織としても細やかな指導で大学最強チームへと鍛えた岩出雅之監督だったが、姫野に関しては細かい注文を出さず、持っているポテンシャルを引き出すことを優先しようというアプローチをしていたためだ。

 その効果は、トヨタ自動車での1シーズン目から開花した。2017年に、07年W杯で南アフリカを優勝に導いた名将ジェイク・ホワイトが監督に就任すると、ルーキーの姫野を主将に抜擢。国内では異例の人事だったが、指揮官は「帝京大時代に、素晴らしい勝つカルチャーを経験してきた選手。いまのトヨタには、そのリーダーシップが必要だ」と迷いはなかった。

 その期待に違わず、姫野が先頭に立ったチームは、7シーズンぶりの4強入り(総合4位)を達成。同年日本代表入りした姫野は、11月に行われた当時世界ランキング3位だった強豪オーストラリアとのデビュー戦にLOとして出場すると、終了直前にトライを奪ってみせた。相手ゴール前の防御を弾き飛ばしてインゴールに飛び込む姿は、13年のNZU戦を彷彿とさせる力強さに満ち溢れていた。

 その後の躍進は、多くのファンの記憶に新しいはずだ。代表入り当時は、2019年のW杯メンバーに選ばれるかは、まだボーダーライン。FW第2、3列を兼務できるユーティリティーで“滑り込み”かという評価あったが、姫野は進化を怠らなかった。

 W杯開幕まであと1年という趣旨の企画で、都内でロングインタビューをする機会があった。当時はNO8かLOでの出場が多かった姫野は「FLに挑戦したい。そのためにジャッカルなどの精度を高めていきたい」と語っていた。当時の姫野の最大の持ち味は、攻撃時にボールを持って相手ゲインラインを破って前に出るボールキャリーの強さだった。だが、1年後のW杯では、このイヌ科イヌ目の動物名を自らのトレードマークとしてお茶の間に浸透させていた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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