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姫野和樹は世界最高峰のSRでも輝けるのか 7年前に気づかされた“怪物の真価”

姫野の移籍が日本代表に与える影響は?

 この強い信念と、置かれた立場に満足せず、さらなる進化をめざす野心が、姫野をオタゴに向かわせるのは至極当然のことだろう。

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 新たな挑戦を決断する前に、姫野は経験豊富な代表メンバーにも相談したこと明かしている。「(日本代表主将の)リーチ(マイケル、東芝FL/NO8)さんには相談しました。『行くべきだ、姫野はやれるから行きなさい、行ったほうがいい』と言われましたし、堀江(翔太、パナソニックHO)さんからも後押ししていただきました。いろんな選手に後押しいただきました」。ブレることなく、常に自分の目指す道を進んできた姫野だったが、NZ・チーフスで同じFW第3列で主力選手として活躍したリーチ、日本選手で初めてSR入りした堀江らの言葉が追い風になったのは間違いない。

 フランスリーグで開幕から快足を見せているFB松島幸太朗のように、欧州でのプレーにも興味を示している姫野だが、敢えてNZでのプレーを選んだ理由にも触れている。SRで成長できるプレーを聞かれると「スキルを向上させたい。パスもそうですし、FWだけどBKみたいにステップ切ってオフロードパスをするとか、裏に抜けた選手からボールを貰ってそのままトライするとか、そういうスキルを期待しています」と、NZを中心とした南半球特有のFW、BK関係なくボールを動かしトライをめざすスタイルに、自らの進化の可能性を感じているのだ。

 新天地での目標を聞かれると「全試合に出場すること。チームとしては優勝を掲げていると思うので、その2つが目標です。チームを引っ張っていける存在になりたい」と語った姫野だが、果たしてハイランダーズでSR出場メンバーに選ばれ、優勝という高みに上り詰めることができるのだろうか。

 まず、メンバー入りが大きな挑戦となるのは明らかだ。2020年SRは3月中旬の開幕7節を終えて新型コロナの影響中止。NZでは世界に先駆けて6月13日からSRアオテアロアを開催してきた。この大会でハイランダーズはFW第3列を実質上固定して戦ってきたのだが、今オフに不動のメンバーの1人として将来を期待されたFLディロン・ハントのブルース移籍が確定。姫野の獲得はハントの後釜探しの一環と考えていいだろう。もう1人の主力FLシャノン・フリゼルのブレークダウンでの激しさ、しぶとさは、姫野にとっては最高のお手本となるはずだ。

 姫野のプレーを熟知し、気心が知れたブラウン新HCの存在がプラス材料なのは明らかだ。日本代表の躍進に手腕を発揮した同HCの特徴は、選手個々の緻密な役割分担で、ボールを幅広く動かすスタイル。15人が駒となってチームが機能するブラウン流のラグビーを日本代表で熟知する姫野に、戦術上のハンディキャップは少ない。来季のハイランダーズが日本代表との戦術上の共通点があれば、姫野も持ち合わせる日本選手特有の勤勉さが強みになる可能性もある。

 ハードルがあるとすれば、コンタクトでのフィジカルパワーでどこまで太刀打ちできるかだが、代表デビューのオーストラリア戦でも証明したように、NZのSRチームでも通用する期待は高い。コロナの影響もあり、SRはまだ来季の日程、参画チームなどの大会概要を発表していない状況だが、チームやコーチの信頼を得るためには、むしろ高いフィジカリティの中での長丁場のリーグで、チームを離脱するような怪我をせずにプレーできるかのほうが重要だろう。全てが英語になるコミュニケーションで、馴れるまに時間がかかる可能性はある。言葉も含めた適応力のスピードも、信頼感を高めるための重要なポイントになるはずだ。

 今回の挑戦が、日本代表がベスト4以上を目標にかかげる2023年W杯へ向けての姫野の成長に大きく役立つ期待は大きいが、1人の選手の挑戦だけに終始するのであれば、その意義は半減する。昨秋のW杯での躍進が日本選手の評価を高めたことが、姫野、松島の挑戦に直結しているのは明らかだ。この2人は、日本選手の中でも群を抜くポテンシャルの持ち主なのは周知のことだが、他にも潜在力を秘めた日本人選手がいるのは間違いない。

 新型コロナの影響で、海外挑戦どころではない状況が続いたことは日本選手、日本代表の強化には大きなマイナスとなったが、姫野のハイランダーズ入りで状況は新たな局面を迎えている。姫野に続く旺盛な向上心や野心を持った新たなチャレンジャーが、南北半球の強豪国へと櫂を漕ぎだすようになれば、選手層に厚みを持たせるという、2023年へ向けた日本代表の課題克服にも追い風になる。3年を残す次回W杯だが、選手が自分自身のレベルアップさせ、チャンスを掴んでメンバー入りするために残された時間は決して多くはない。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19年と6大会連続で取材。

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