東京マラソン

　東京マラソンは3日、東京都庁～東京駅前行幸通りの42.195キロで行われ、男子の西山雄介（トヨタ自動車）が自己ベスト2時間6分31秒で日本人トップの9位だった。日本人男子は今夏のパリ五輪残り1枠を懸けた最終選考レース。設定記録2時間5分50秒を切った日本人最上位が内定だったが、西山は41秒届かず。最後の1枠は今大会不在の大迫傑（Nike）が内定した。レース後に日本陸連の瀬古利彦ロードランニングコミッションリーダー、高岡寿成強化委員会シニアディレクター中長距離・マラソン担当が会見した。

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　スタート地点は晴れ、気温6度、湿度38％の好条件。東京五輪で連覇した前世界記録保持者エリウド・キプチョゲ（ケニア）らアフリカ勢は、世界記録を上回るハイペースで先頭集団を作った。2時間4分56秒の日本記録保持者・鈴木健吾ら日本のトップ選手たち後続で集団を形成。20キロ手前で西山、木村慎が次々と転倒。接触が原因とみられ、周囲の選手も巻き込まれた。

　鈴木も27キロ付近で後退。一度転倒した西山が巻き返し、日本人トップを守った。30キロで一時は浦野雄平に前を譲ったが、33キロで再び日本人トップに。35キロ手前では、優勝争いから脱落したキプチョゲを抜いた。設定記録を6秒上回る2時間5分44秒ペース。西山は最後まで力を振り絞り、自己ベスト2時間7分47秒を1分16秒更新した。

　しかし、2時間5分50秒には41秒届かず顔を覆って涙。パリ五輪最後の1枠は大迫のものとなった。残り2枠は、昨年10月のマラソングランドチャンピオンシップ（MGC）で小山直城（Honda）と赤崎暁（九電工）が内定していた。

　この日はベンソン・キプルト（ケニア）が2時間2分16秒で優勝。女子はストゥメアセファ・ケベデ（エチオピア）が2時間15分55秒で制し、日本記録更新を目指した新谷仁美（積水化学）は2時間21分50秒で日本人トップの6位だった。

　会見した瀬古氏、高岡氏の主な一問一答は以下の通り。

――総括を。

瀬古氏「残念ながら記録を切る人が現れませんでした。しかし、全員が五輪に向けて頑張ってきたのはリーダーとして評価したい。代表争いは終わり。（正式には）3人目は誰かわかりませんが、決まったら応援したい。女子の新谷さんも残念ながら記録が出ませんでしたが、また日本記録を目指してほしい」

――総括を。

高岡氏「世界で戦うことを期待できる選手たちが挑戦した。思い描いた結果になることを期待し、楽しみにここに来ました。レース内容は前半からターゲットタイムのラップを刻む中、有力選手がついていけなかった。五輪を目指す難しさ、プレッシャーが少なからずあったのでは。その中で執着したレースが見られたのでは。特に日本人トップの西山選手の悔し涙を見て、まだまだ日本のマラソン界は強くなれると感じた。多くの選手が設定記録を目指し、底上げはできたのではないかと思います

　男子の選考会は終わりますが、来年の東京世界陸上に向けて若い選手が力をつけて楽しみです。女子も世界トップ選手が東京を走り、どの選手にも挑戦する姿を見て早くトップに追いつきたいと思いました。キプチョゲ選手が圧倒すると思いましたが、キプチョゲ選手が遅れる、日本人選手に抜かれるところを見てレースの難しさを感じました」

――パリ五輪で期待すること。

高岡氏「MGCでも1、2位と3、4位の差は近かった。誰を代表しても自信をもって送り出せるのでは。精神的にもタフなコースで勝負したのはパリに繋がるのではないか」

瀬古氏「3番手が大迫。大学の後輩（早大）ですから彼には出てほしいなと思います。五輪経験者の大迫が入れば彼しかいない。他の2人にアドバイスできる。是非入っていただいて、いわゆるマラソンメンバーを引っ張ってもらいたい。そういう役目だと思う」

――MGCを2回やってマラソン界への影響。

高岡氏「まだ五輪が終わっていないので言いにくいですが、多くの方に関心をもっていただいた。MGCを目標にした選手もいたし、多くの選手が目指せるものだった。東京五輪の延期で難しかったが、今回は（パリ五輪が）8月に開催されるところでどうなるか見ていきたい」

瀬古氏「ファイナルチャレンジで速いペースで行くことを普段はなかなか経験できない。それができてよかった。記録を狙うと思うように走れないことがよくわかった。大阪マラソンでも五輪を狙う選手は力が入っていた。五輪は難しい。これから伸び伸びと走れて必ず記録につながってほしいと思う。今回は残念ですが、芽は潰れていない。これからに期待したい。東京世界陸上もあるので、五輪に出られなかった人はそこを目指して、もう一回記録に挑戦してほしい」

――MGCファイナルチャレンジを含め、最近の世界大会でも顔ぶれが変わった。評価、感想は。

高岡氏「世界大会の顔ぶれは毎回入れ替わっている。再現性の難しさですね。狙う難しさが選手には一番大きな問題では。ただ、そこを意識して超えることで本当に強い選手ができると思う。代表選手は経験を生かして次に繋げてほしいし、代表になっていない選手も次を目指してほしい。自分もできるとメンタル的な効果もあると思う。日本のレベルアップになれば」

瀬古氏「本当は西山君辺りが記録を出してくれれば、再現性のある選手になったのでは。また期待しています」