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野球界にとどまらない長嶋茂雄さんの功績 “野球なき時代”から五輪に情熱、知られざる「日本トライアスロンの父」の顔

プロ野球の巨人で選手、監督として活躍し、「ミスタープロ野球」と呼ばれた長嶋茂雄さんが3日、肺炎のため、都内の病院で死去した。89歳だった。野球界に偉大な足跡を残したミスターだが、功績は野球界のみならずスポーツ界に及んでいる。日刊スポーツ記者として、オリンピック競技を中心に昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した荻島弘一氏が「ミスターが愛したオリンピック」について記す。

オリンピックをこよなく愛した長嶋茂雄さん(左)、1964年東京五輪で男子サッカー・日本―ガーナ戦を王貞治さんと一緒に観戦していた【写真:産経新聞社】
オリンピックをこよなく愛した長嶋茂雄さん(左)、1964年東京五輪で男子サッカー・日本―ガーナ戦を王貞治さんと一緒に観戦していた【写真:産経新聞社】

スポーツライター荻島弘一氏が記す「ミスターが愛したオリンピック」

 プロ野球の巨人で選手、監督として活躍し、「ミスタープロ野球」と呼ばれた長嶋茂雄さんが3日、肺炎のため、都内の病院で死去した。89歳だった。野球界に偉大な足跡を残したミスターだが、功績は野球界のみならずスポーツ界に及んでいる。日刊スポーツ記者として、オリンピック競技を中心に昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した荻島弘一氏が「ミスターが愛したオリンピック」について記す。

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 あの長嶋さんが逝った。巨人ファンではなかったし、高校生相手の野球取材経験しかない。それでも、喪失感は大きい。プロ野球のスーパースターであると同時に、日本のスポーツ界にとっても唯一無二の存在。何度も取材し、話をする機会に恵まれたことは、今振り返ってみても記者として、人として大きな財産だと思う。

「長嶋さんが来ているから、遊びに来ませんか」。まだ駆け出しの記者だった40年前、会社にかかってきた電話(携帯電話もなかった)で、代官山にあった日本トライアスロン連盟(JTF、当時)の事務所に誘われた。極度の緊張で会社を飛び出しことを思い出す。

 巨人を離れた「浪人時代」。しかし、長嶋さんは休む間もなく動いていた。84年ロサンゼルス五輪視察の時にトライアスロンに出会い、85年創立のJTF初代会長になった。「スーパースター」を目の前に、心臓が飛び出しそうになっている新米記者に、長嶋さんは優しい笑顔で話しかけてくれた。

「トライアスロンっていうのは、おもしろいですよ」。まだ、五輪競技でもなければ、一般的にも知られていない競技。「水泳と自転車とランニングを一度にやる。そんな競技は他にないですよ」。競技の魅力を思い入れたっぷりに熱く聞かせてくれた。野球とまったく関係ないところでも「燃える男」だった。

 長嶋さんは「日本トライアスロンの父」でもある。伝統の天草国際大会では毎年スターターを務め、普及にも貢献。将来性と競技性の高さに魅せられ「オリンピック競技になる可能性がある」と国内外でPRに努めた。野球界復帰とともにJTF会長の座は退いたが、95年に発足した日本トライアスロン連合(JTU)では名誉会長に就き、現在まで顧問として関わってきた。

 当時、長嶋さんと一緒にJTFを立ち上げたJTU専務理事で世界トライアスロン連合(ITU)副会長の大塚真一郎氏は「長嶋さんがいなかったら、今の日本トライアスロンはない」と話す。当時、未知の競技が注目されたのは長嶋会長の存在も大きい。

 競技の普及に尽力し、五輪競技入りへも貢献したトライアスロンの牽引者。10年前に話を聞いた時も「ずっとトライアスロンは気にして見ています」と話していた。JTUは訃報を受けてすぐにHPを更新。「長嶋氏の先見性とリーダーシップなくして、現在の発展は語れません」と感謝し「築いてくださった礎の上に立ち、今後もスポーツを通じた人づくり、地域づくり、社会づくりを推進し、次世代へとその精神を引き継いでまいります」と故人を偲んで誓っている。

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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