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国枝慎吾に引っ掛かった悪気のない言葉 「テニスを車いすでやって偉いね」からの闘い

車いすテニスの国枝慎吾さんが7日、都内にある所属先のユニクロ有明本部で現役引退会見を行った。4大大会では男子世界歴代最多50度の優勝を誇る38歳。パラリンピックと合わせた「生涯ゴールデンスラム」も達成した。長い競技生活の中では、障がい者スポーツとして報われない時期も経験。数々の栄光の裏には、車いすテニスへの目線を変える闘いがあった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

都内で引退会見を行った国枝慎吾【写真:中戸川知世】
都内で引退会見を行った国枝慎吾【写真:中戸川知世】

国枝慎吾が引退会見、車いすテニスを「スポーツ」に変えるまで

 車いすテニスの国枝慎吾さんが7日、都内にある所属先のユニクロ有明本部で現役引退会見を行った。4大大会では男子世界歴代最多50度の優勝を誇る38歳。パラリンピックと合わせた「生涯ゴールデンスラム」も達成した。長い競技生活の中では、障がい者スポーツとして報われない時期も経験。数々の栄光の裏には、車いすテニスへの目線を変える闘いがあった。(文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平)

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 自分に問うた。「現役生活で何と戦ってきたのか」。国枝の答えは3つ。ネットの向こうにいる相手、弱気の虫に襲われる自分。もう一つは目に見えないものだった。

「車いすテニスを社会的に認めさせたい。いかにスポーツとして見せるのか」

 9歳の時に脊髄腫瘍を発症し、下半身麻痺に。車いす生活になった。世間は大人気漫画「SLAM DUNK」が空前の大ブーム。「僕もバスケをやりたかった」。しかし、家の近くにチームがない。母の趣味はテニス。「コートに無理やり連れていかれたのが始まりだった」。小学6年、運命の出会いだった。

 のめり込み、一気に駆け上がった。その中で聞く、悪気のない言葉が引っ掛かる。「車いすでテニスをやって偉いね」。大多数の目線が同じだった。

「車いすでテニスをやっていることが偉いわけじゃない。目が悪ければ眼鏡をかける。僕は足が悪いから車いすに乗る。その状態でスポーツをするしかない。スポーツをしたいというのは、みんなも思うこと。結局、そこに特別なことはないとずっと思っていた」

 04年アテネ五輪、日本選手団が当時史上最多のメダル獲得に沸いた1か月後。20歳で迎えた初めてのパラリンピックは、男子ダブルスで金メダルの快挙を達成した。しかし、新聞記事が載ったのはスポーツ欄ではなく社会欄。「共生社会実現のために」という切り口がついて回った。

「僕が金メダルを獲っても、なかなかスポーツ欄に載らない。福祉として、社会的な意義のあるものとして強くメディアを通して伝わっていた。これを変えないと。車いすテニスってこんなに面白いんだ、予想以上にエキサイトするスポーツなんだ、と。どうにかスポーツとして扱ってもらいたい」

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