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国枝慎吾に引っ掛かった悪気のない言葉 「テニスを車いすでやって偉いね」からの闘い

花束を手にする国枝慎吾【写真:中戸川知世】
花束を手にする国枝慎吾【写真:中戸川知世】

東京で3度目の金メダル「車いすテニスを本当にスポーツとして受け入れてもらえた」

 集大成に掲げた21年東京パラリンピック。日本選手団の主将として臨み、3度目の金メダルを手にした。「東京大会が決まった2013年からの夢が叶った。その瞬間は今でも鮮明に覚えているし、写真を見ても震えるような感情になる」。3つ目の闘いを制した瞬間でもあった。悪気のない言葉に引っ掛かっておよそ20年。感慨深げに歩みを振り返った。

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「スポーツとして見てもらうという点で、反響にはもの凄く手応えがあった。昨年は満員のお客さんの前でプレーできた。僕の中では、車いすテニスを本当にスポーツとして受け入れてもらえたと感じました。全く時代が変わりましたよね。皆さんがパラリンピックを知っているし、車いすテニスを知っている。車いすテニスを始めて28年になりますけど、この僕自身が本当に変わったなと思うところです。

 相手との戦い、自分との闘い、そしてスポーツとして見られたいという闘い。その3つは現役中、ずっと肩にのしかかっていた。なぜ、2022年はグランドスラムで3勝できたのか。今までスポーツとして皆さんの目を変えたいとか、そこにプレッシャーを感じていたのが、1年間全く感じなかったんですよ。1回もそういった気負いを感じることなくプレーできた。ようやく純粋にテニスができて、相手と向き合えるようになった」

 昨年は7月のウィンブルドンを初制覇し、パラリンピックと合わせた「生涯ゴールデンスラム」を男子で初めて達成した。芝生のコート上でチームと抱き合いながら伝えた第一声。「これで引退だな」。ラケットを握った11歳の頃、存在すら知らなかったパラリンピックで3度の金メダル。4大大会はシングルス28度、ダブルス22度の優勝。異次元の戦績以上に求めるものは、もうない。

「もう十分やりきった。やり残したことはありません」

 1月、16歳の小田凱人(ときと)が全豪オープンで準優勝。女子の第一人者、上地結衣も活躍を続ける。「僕がやってきた意味があったなと思える瞬間ですね」。引退会見には約200人の報道陣らが集結。アテネを制した時には考えられない光景に、晴れやかな笑みを浮かべた。

 世界ランク1位のまま現役引退。誰にもできないことを成し遂げ、誰にもできない方法で去る。「最高のテニス人生と言い切れる」。スポーツ界に色鮮やかな足跡を残し、ラケットを置いた。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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