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無敵だった短距離女王・福島千里 惹き込まれた、決して五輪を諦めない32歳の「必死」

布勢スプリント予選、タイムを見た瞬間に思わずガッツポーズした福島【写真:奥井隆史】
布勢スプリント予選、タイムを見た瞬間に思わずガッツポーズした福島【写真:奥井隆史】

数秒ためて語った決意「必死で頑張ります」

 誰もが認める日本女子短距離界の第一人者が、曇った表情に垣間見せたもどかしさ、プライド。予選でタイムを見た瞬間は、思わずガッツポーズが飛び出した。でも、日本選手権出場は決してゴールではない。この日の結果は「最低限」と評価し、“先”を見据えていた。

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「日本選手権というものは、代表選考会ということを絶対に忘れてはいけない。前半が遅いので、まだまだやりようがあると思う。(東京五輪出場は)選考要項を見ると、苦しい状況。高い目標だと思ってしまうことが情けないけど、一番近いところにいたはずなので」

 五輪参加標準記録は11年前の自己ベストより速い11秒15。極めて厳しい状況は変わらない。取材の最後に「もう……」と言った後、数秒ためて「必死で頑張ります」と決意を込めた。その表情と淀みなく言い切った声が印象的だった。

 ただ、この後周囲にかけられた言葉の多くは「おめでとう」だったという。

「五輪、世界大会に行くのが当たり前だった。そこ(日本選手権出場)で終わりじゃないし、始まりだったのに」

 リオ五輪後はアキレス腱痛などに悩まされた。20年9月の大会で日本選手権出場が絶望的となった時には「怪我とか痛みもほぼない。足が痛くないので怪我の影響はない」と涙声で振り絞った。

 どんなアスリートにだってその時は訪れる。歯がゆさもあっただろう。でも、まだ諦めない。20年秋に慶大から順大に拠点を変更。今年4月から順大大学院スポーツ健康科学研究科で医科学などを学び、異なる環境から再出発を図った。

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