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ラグビー新リーグが失敗を許されないワケ 日本代表強化へ直結する“壮大な構想”とは

国内の新リーグ構想のフォーマット図
国内の新リーグ構想のフォーマット図

ディビジョン1のチーム数を「12」に絞り込む2つの理由とは?

 国内のリーグ構想に目を転じてみよう。まず注目されるのはディビジョン1のチーム数だ。現状のトップリーグ(TL)は16チームで構成されるため、4チームが“降格”の憂き目にあうことになるのだが、それでも12チームに絞り込む理由は2つある。

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 1つは試合数の問題だ。新リーグ構想は地域性と事業化を重視するため、地元で開催されるホームゲームに重要な意味がある。そのため、ホームアンドアウエー(準備室ではホストアンドビジターと称している)方式の導入が不可欠と考えている。ここから計算される試合数と、代表活動のカレンダーなどを踏まえた公式戦期間を突き合わせると、マックスのチーム数が12になる。

 もう1つの理由が、質の高い試合を提供するための実力格差への配慮だ。谷口室長が過去のデータを踏まえて説明している。

「過去のTLで直近のものを見ると、(上位)8と10(チーム)では、30点以上の大差のゲームが1試合ずつくらいしかなく、12チームでは2試合になる。14チームになるとそこから3、4試合増えていくことになる。1、2試合であれば許容範囲かという判断で12チームという計算をしています」

 TL以上にプロ化を意識した運営をめざす新リーグだからこそ、質の高い試合を顧客に提供することの重要さは大きい。同時に、日本ラグビーの競技力を高めるためにも、消化試合のような実力不均衡の試合を減らすことが求められるのは当たり前だ。準備室には実質上の2部降格となるチームを増やしたくない思惑がある一方で、現行TLの16チームは多すぎるという意見もチーム関係者、ファンにはある。

 一部のチームからは、より競い合う環境を作るために「8チーム制が望ましい」という意見も聞いた。個人的には、現在の国内チームの実力なら上限10チームによるリーグが妥当だと考えるが、リーグ側は「より高質な試合」と「より多くのチーム」の折衷案として、12チームという数字に収まったということだ。付け加えておくが、谷口室長は各ディビジョンのチーム数については、今後の増減の可能性は否定せず、状況に応じて柔軟に判断していくことになるという。

 この会見で、今後も慎重な検討が必要だと感じたのは、各ディビジョンの昇降格における「審査」だ。リーグへの参入について、新リーグ準備室は事前にチーム側にホストタウン・ホストスタジアムの選定や、育成機関の設置などの運営能力を持つように求めている。会見後の補足説明では、審査内容・方法について「事業性・社会性をチームが実装しうることを重視しており、総合評価となる」と説明している。

 つまり、リーグ戦での成績と事業性などの評価を含めた審査で最終的な昇降格が決まることになる。その審査内容については「各チームとの守秘義務に基づいて審査の結果内容を一般公開しない」と説明しているのだが、複数のチーム関係者からは「審査内容を事前に明示するべきだ」という声を聞いた。

 昇降格は、チームにとってみれば次のシーズンや数年というスパンでの運営方針、予算などにも直結する重要な案件だ。この観点から考えれば、審査は出来る限り“密室の審査”を避けて透明性を持たせることが必要だという意見は尊重するべきだろう。

 例えば昇格対象のチームが、一部の審議項目をクリアできてない場合に、他の項目の達成度などを加味して昇格を認めるのか、それとも厳格に昇格を認めないのかなど、判断の線引きが難しいケースが生じる可能性はあるだろう。このようなケースでは、総合評価のほうが結論を下しやすいはずだ。

 だが、まず前提として昇格のための評価項目を明示して、誰もが対象チームが昇格に値するのか否かを納得できることが、チームはもとより多くのファンや社会から理解を得るためには重要だ。現時点で「原案」として各チームに内示されている各ディビジョンへのチーム振り分け案ですら、疑問を抱いているチームがあると聞く。これが、新リーグが始まってからの“生き死に”に関わるとなれば、チームから現状以上の強い反発や抗議を受ける可能性は否めない。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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