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ラグビー新リーグが失敗を許されないワケ 日本代表強化へ直結する“壮大な構想”とは

ファンには分かりづらかったトップリーグの大会フォーマット、新リーグは?

 ちなみに、昇降格にも関係する新規参入については、柔軟性を持たせている。参入条件をすべてクリアできていないチームでも、改善を進める意思を持っていると判断された場合はディビジョン3への参入を認めていく方針だ。つまり、ディビジョン1、2と3の間で審査のハードルの高低差をつけ、ディビジョン3に参戦しながら、当初はクリアできていなかった基準を満たせば上位ディビジョンに挑戦する権利を与えるのだ。ディビジョン3が、参入条件をクリアできていないチームの受け皿の役割を持たすことで、より多くの参入希望チームに門戸を開こうとしている。

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 会見では新リーグの中長期的視野に立った施策も説明された。開幕シーズンの2022年から24年までをフェーズ1、25~28年をフェーズ2、29~32年をフェーズ3として、このフェーズごとに大会フォーマットや規約を修正、改善していくという。現行のTLをみると、2003年の発足から毎年のように大会フォーマットを変更してきた。W杯による日程変更などの“とばっちり”もあったが、それにしても毎シーズンのように前年とは異なる方式で行われたことは、ファンにとっては分かりづらいものだった。このような反省も踏まえて、猫の目の様にフォーマットが変わることを回避しようという思惑もあるようだが、同時に岩渕専務理事は興味深い説明をしている。

「今の世界の話の中で、フェーズ2のところでカレンダーが動きだす可能性があると認識しています。それと共に国内リーグのカレンダー、試合数の問題、事業性の問題などを(フェーズ2で)出来るだけ調整をかけて、よりリーグとして確固たる形にしていきたい。フェーズ3のところでは、10年という大きなスタンスの中で、CBMを含めて(新リーグが)世界最高峰のリーグになるべく方向性を見出すフェーズと位置付けています」

 歴代の協会首脳の中でも、国際舞台での高いコミュニケーション能力を発揮してきた同専務理事らしい、世界規模の多様な情報に基づいたビジョンがこのフェーズ制に反映されているのは評価したい。世界のベスト8という未知の領域まで進化してきた日本代表の実力を踏まえても、世界のラグビー先進国が国境を超えて画策する国際大会やリーグに、どのようにキャッチアップしていくかは重要な課題であり、日本チームに、より高質なリーグを提示することも代表強化に直結する時代が訪れている。

 開幕までのカレンダーとしては、今年4月に新リーグの運営法人が発足し、6月にはリーグ名称や各ディビジョンへのチームの振り分け、そしてリーグ理念等が発表されるという。しかし、開幕まで1年というカウントダウンのスタートラインで、いまだにリーグ名称が発表できず、大会スポンサーや放映契約などの収支面の大きな柱もお披露目できていない。

 今季TLが開幕2日前に延期が決まったことで、開幕戦前日の新リーグ会見にスポットが当てられる形にはなった。だが、ファンや社会へ向けては、TL開幕への関心度を高めるべきタイミングで、新リーグのフォーマットを発表することも疑問を感じざるを得ない。もちろんコロナ禍によるスローダウンは致し方ないが、昨年12月には発表する予定だった会見がTL開幕戦前日にズレ込んだことは、出遅れ感を否めない。

 今、ラグビー協会と新リーグ準備室に求められるのは、チームを軸としたステークホルダーとのコミュニケーションを、いままで以上に積極的にとりながら、開幕へ向けた準備を加速させることだ。失敗は許されない。なぜなら、新リーグこそが、世界ラグビーの潮流を読み、リンクしながらの代表強化と、国内ラグビーの構造改革を加速させる壮大な構想だからだ。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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