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“死の組”に入ったラグビー日本代表 日本大会超えへ、熟練記者が見た本当の可能性

リーチ主将の本音「残り2、3年でテストマッチの数が少ないと、少し心配です」

 代表活動の遅れについては、抽選会翌日、ジョセフHCの会見を追うように取材に応じた日本代表のFLリーチ・マイケル主将(東芝)も不安を滲ませている。

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「確かに南アフリカと日本だけがテストマッチの経験がない。それは、しようがない。今後1試合1試合どんなことを学べるか、どう成長していくかが大事になると思う」と語った一方で、次回大会でプール戦を突破するためには必要なことを聞くと、こう本音をもらした。

「去年の(W杯での)強いスクラムを継続するのと、少しずつ強化する必要がある。そしてスコッド(代表候補)を伸ばさないといけない、ただスコッドを伸ばすのじゃなくて、スコッドの中で経験をさせることが大事なことだと思う。残り2、3年でテストマッチの数が少ないと、少し心配です。だから選手を伸ばす場を、どう作っていくかが大事になると思う」

 リーチが力説した“スコッドを伸ばす”とは、代表の選手層に厚みを持たせることだ。この選手層の厚みに関しては、9月20日にアップしたコラムでも触れているのだが、日本代表が昨年のW杯で成し遂げたベスト8を超えるためには、重大かつ欠かせない挑戦になる。1年分吹き飛んでしまった強化時間、試合をどう補っていくのか。ジョセフHCは「テストマッチのシーズンを伸ばすとか、国際的にカレンダーのオプションについて話し合われている」とテストマッチ期間の拡大などの可能性に触れているが、来年このような大会、試合の開催は難しい。再来年以降の朗報を待つしかない。

 現時点では具体的な対策はない中で、同HCは興味深いこともコメントしている。強化時間が減少してしまった中で、どのような強化プランがあるのか――という質問をすると、指揮官はこう語っている。

「これまでも時間の管理だったり、合宿のフォーマットをやり繰りしながらやってきました。そして、日本の選手たちは高校の部活という時代から、そういうことにいい意味で馴れてくれている選手もいて、適応力があるという風に思っている。なので、これからもその適応力を1つのカギになると思う」

 日本代表が世界の中でステップアップしていく中で、日本選手の勤勉さが強化に役立ってきた。指導者から言われたことを忠実に、高い完成度で遂行しようという姿勢は、国民性と言ってもいいだろう。そして、ジョセフHCは、勤勉さに加えて、高校の部活などでの、制約があったり、海外では考えられない長時間の猛練習などの中で、あてがわれた時間内でやり繰りしながら課題を終わらせるような適応力に可能性を感じているのだ。通常では補えない強化の遅れを挽回するために、日本の高校生らが日常的に経験してきた“段取り力”が、どう強化に反映されていくのかに注目したい。

 振り返れば、ジョセフHCが初めて就任した2016年も契約の問題で春シーズンは直接指揮を執れなかった。4年前に比べると、HCの日本選手に対する知識、情報量は各段に増えている中で挑む2023年への道。険しい道程と厳しい対戦相手は、もう確定した。時間を賢く使い、クリエートしながら、ターゲットへ向かって突っ走るだけだ。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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