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女子ゴルフで「逸材が埋もれる理由」 北田瑠衣が思う「伸びる選手」との3つの差

オンラインで取材に応じた北田瑠衣
オンラインで取材に応じた北田瑠衣

1試合平均30万円の経費、賞金を意識してプレーする必要はあるのか

 初優勝した試合は「雲の上のさらに上の存在」と尊敬する不動裕理、当時アマだった諸見里しのぶと最終組で優勝争い。最強女王の不動と4打差で出たが、自身が後半にボギーで崩れかけた時にふと思った。「『新人だし、プレッシャーだよね』と思われるのが嫌だなと思っていました。踏ん張って頑張ろうという気持ちで結果的に勝てたと思います」。初優勝がかかる緊張感の中、周囲の目線を反骨心に変えた。

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 この気持ちのコントロールは自然とできたという。未勝利から「初優勝」の冠を手にできるかどうかを左右する期待の捉え方。周囲の支援も「上位でプレーすると、メディアに取材していただいてテレビにも映る。そこでスポンサーさんのワッペンが映ることで『少しでも恩返しできる』という気持ちにはなりました」とポジティブな力になった。

 しかし、誰もが前向きに捉えられるわけではなく、期待を重圧に感じてしまう選手もいる。北田は「でも、調子が悪い時こそ周りの方々は温かく見守ってくれているんですよ。それがわかるから、がむしゃらに頑張れる。プロになって、より責任感を持てるようになりました」と当時を振り返った。“期待に応えなくちゃ”と考えすぎる必要はないのかもしれない。

 精神面で与える影響はもう一つある。アマとプロの決定的な違いが賞金だ。アマは優勝しても0円だが、プロなら予選を通過すれば順位に応じて変わってくる。たった1打で数百万円の違いが生まれるプロの環境では、一般人に計り知れない重圧があるだろう。

 選手の経費は移動、宿泊、エントリー費など最低でも1試合平均30万円ほど。帯同キャディーやトレーナーと契約すればさらに膨れ上がる。安定して上位に入れる選手ならともかく、若い選手がこのプレッシャーの中で思うようなプレーができるかどうかも、成績を残すか否かに関わってくる。

 北田はプレー中に賞金のことは「忘れる」という。ラウンド後に「うわ、あの1打いくらだった!」と笑い話になることはあるが、「プレー中は本当に1打に集中しているのであまり賞金額は考えたことがないですね」と明かし、こう続けた。

「むしろ順位。もちろん、○位タイよりも単独順位の方が(金額が)いいじゃないですか。なので、『よし、バーディーを獲れた。単独○位になる』という目線でボードを見て、自分の順位を確認していたことはありました」

 コース脇に設置されたリーダーボードで自分の順位を確認しながらプレーする選手と、全く視界に入れずにプレーのことだけを考える選手がいる。「私の場合はすっごい見てました(笑)」と北田は順位を気にしながらも、これがプレーに悪影響を及ぼすことはなかった。

 生のコースを早くから経験できる環境と積み上げた基礎、周囲の期待から生まれるプレッシャーの捉え方、賞金の懸かる中で自分のプレーができるか。これらの要素がプロでも順調に成績を残せるか、埋もれていってしまうかに影響する。それでも、北田は今の若手に対してこう感じるという。

「ここ5年くらいは、アマチュアの時からプロツアーで活躍している選手でも、すんなりプロテストに受かって活躍している選手が凄く多い。そういう選手を見ると、とってもハートが強いんだなと思います」

 厳しいプロの環境で一人でも多くの選手が活躍し、ファンを楽しませてくれることが望まれる。

(6日掲載の第2回は「渋野日向子×宮里藍の共通点」)

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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