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「僕が座ると周りがはけていくけど…」 宮崎大輔が37歳で入り直した大学が面白い理由

世界の大舞台で活躍を続ける内野洋平(中央)【写真:荒川祐史】
世界の大舞台で活躍を続ける内野洋平(中央)【写真:荒川祐史】

宮崎が思う「失敗」の価値、胸に刻んでいる本田宗一郎の言葉

内野「僕のイメージでは『華やかな世界に行ったなあ』という感じですよ」

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宮崎「全然、華やかじゃないよ! いつも昼メシ一人で食べているからね(笑)」

内野「学食で『ええ、あの人カッコいい!』みたいにキャピキャピした感じなのかと」

宮崎「いや、学食行けないし。俺も入るまではそう思っていたけど、おじさん扱いされるから(笑)」

内野「僕だったら、今から大学に行け、勉強しろと言われても、踏み出せないです。ただ、僕の競技はゴールが分からない。世界のトップになっても、やりたい技はまだまだ死ぬほどある。僕が得意じゃないジャンルで、僕がやりたい技ができる選手がほかにいる。陸上みたいに『誰が一番速いか』だったらボルトになるけど、BMXの場合は『この部分を取ったら、こいつが世界一だよな』というのがいくつもあり、全体で見た評価で僕が一番なだけ。だから、自分の中では全然納得してないし、一流とは思えない。

 そこまで行くと、初心者に毛が生えたくらいの練習をしていると、自分の中で忘れていたものが甦ることがある。プロ同士で練習するより、教えている小学生に『しんどかったら休んでいいよ』『嫌だったら技を変えてもいいよ』と言うけど、しんどい顔をしているのに本当にやりたくてやっている感じ。僕はもう『誰も成功してない技、本当にできるかな』と半信半疑で挑戦するけど、その子たちは『絶対できる』の眼差し。できる、できないじゃなく『頑張れば、できる』。その眼差し、忘れてたなと気づく」

宮崎「小学生を教えると、逆に教えられることあるよね。もう大人になりすぎて、プレーも『裏、裏、裏……』とばっかり考えて動いているから、表の動きを見ると『ああ、こんなに素直にシュート打ったら入るんだ』みたいな」

内野「大輔君が大切にしている『99%の努力と1%のひらめき』も、この年になると1%じゃなく無理矢理ひらめこうとしている。20~30%くらい、ひらめこうと。それは良くない時もある。あと、やっぱり本番と練習は全然違う。練習を本番で出すのは経験値が必要。練習で10回中8回決まる技でも、本番になると半分以下になる。その選択を間違えて減点続きで、上手いのに毎回順位が低い選手がいる。この時はこう戦うというのは経験もある。トランプの大富豪みたいなもので、僕はカードの出し方が上手いだけ」

――2人とも今のポジションには長いキャリアがあり、その裏でたくさんの失敗を繰り返して成長してきたと思います。失敗の価値についてはどう考えていますか?

宮崎「いい言葉があって、ホンダ創業者の本田宗一郎さんの『失敗を恐れるより、何もしないことを恐れろ』。失敗するかもと思っていたら、何も進めない。じゃあ、練習の中でこうなったら失敗の可能性が高くなるとか、こうしたらもっと成功しやすくなるとか、積み重ねないと言えないから。失敗を繰り返す中で、ようやく自分のものになる。最初は誰かを真似ていたとしても、どこかで自分のものになり、自分らしさにつながる。失敗しないのが一番だけど、恐れるよりも失敗から学んだ方がいいと思うね」

内野「僕は大会に出る時、教えている子に言うことがあります。大会に出て緊張するのは当たり前で、練習で決まっていたものが本番で決まらないのは普通。だから『舞台に立った時、大会を目指して何百時間、何千時間、練習してきたこと。その上で、大会で成功しようが失敗しようが、俺からしたらどうだっていい。仮に失敗して順位が低くても、もちろん成功して優勝したら嬉しいけど、その過程で練習してきたもの自体がお前に残っていて、俺も一番欲しかったものだよ』と伝えることがある。

 僕も『世界一になって凄いですね』と言われるけど、何が一番かというけど、大会で世界一になるまでの数か月間、死ぬほど身を削って練習してきたことだと思っている。だから、本番で失敗したり、成功したりしたからといって誰が偉い、偉くないじゃない。ただ『その舞台で緊張しているのは、お前がそれだけ頑張ったということだから。大会のステージに立った時にもう拍手は起きていると俺は思うから、もちろん優勝するために練習はしているけど、失敗しても成功しても、俺の評価は変わらないよ』と。

 僕ももともとは緊張しいで、本番で決められないタイプだった。覚えているのは、27歳の時に考え方を変えたこと。BMXって世界1位になっても、2位、3位になっても変わらない。世の中は回っている。浅田真央さんが五輪の一発で決めるのは本当に凄いと思うけど、僕は優勝しても貧しい子供が食べられるような世界じゃない。自分が思っているほど、自分の世界は大きくなくて、ちっぽけなもの。そう思ってから、急に強くなった。だから、そこでチャンピオンになったとしても、単なる一つの武器に過ぎない」

宮崎「カッコいいわ。『頑張った人が緊張する』というのが、いい言葉だと思う。ホント、そうだろうね。いろいろな技を覚えて『できるかな?』と自分に期待するから。何もしてない人は緊張しない。チームスポーツなら『誰かかがやってくれるでしょ』くらいしか思わない。勉強になります」

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