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選手の心の不調問題、休養した競泳・萩野公介は世の中に願う 人にも、自分にも「優しく生きて」【世界水泳】

休養中に体験したドイツでのエピソードを語った萩野さん【写真:徳原隆元】
休養中に体験したドイツでのエピソードを語った萩野さん【写真:徳原隆元】

休養中にドイツの一人旅で触れた人の優しさ「つらくて、逃避行みたいにした時に…」

――現役アスリートの中には心の不調を抱えている方もいます。萩野さんの経験は参考になるかもしれません。復帰への経緯を振り返っていただけますか。



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「人それぞれなので、僕の話が参考になるかわかりません。でも、僕がなぜ、休養期間に少しフラットに考えられるようになったのか。

 僕はあの期間、ドイツで一人旅をしました。田舎町で夕飯をどこで食べようかと困っていたんです。英語が通じる方もいらっしゃいましたが、僕もそんなに英語が得意なわけではない。スマホで調べた場所に歩いて行ったんですね。そしたら、ちょうどそのレストランが貸し切り状態。誰かがホームパーティーみたいものをしていたんです。

 奥にいた店員さんから『ご飯が少し余っているから、もし同じ料理でよければ出すよ』と言ってもらいました。端っこの席で食べさせてもらったのですが、人との繋がりの温かさみたいなものを凄く感じたんですよね。自分自身は凄くつらくて、逃避行みたいに逃げていた時に『ああ、なんか人って温かいな』と思いました。

 あの店員さんにとっては、僕は『水泳をしている萩野公介』ではなく、ただ歩いていた一人のアジア人。水泳は関係なく、ドイツで温かくしてもらいました。

 アスリートは結果を出せば出すだけメディアに出る機会が増えたり、みんなに『凄いね』と言ってもらえたりする。けど、それって2次的なものであって、1段階目ではないですよね。だから、水泳を水泳だけで解決しようと思ったら『練習を頑張れば速くなる』という話になりますが、それだけだとやっぱり行き詰まる時がある。だから、僕は水泳をする前に『人としてどうあるか』みたいなことが大事だと思っています。

 突き放した言い方だと受け取られると困るのですが、もし競技結果で悩んでいて『辞めようかな』と思っていたら、僕は辞めてもいいと思います。僕は生きているだけで二重丸。競技復帰に向けてどうこうよりも、僕は別に辞めてもいいし、復帰したかったら復帰すればいいと思う。日々を生きていて、日が上がる、日が沈むというのを繰り返しているだけで、僕は『人生、二重丸』だと思います。

 僕はあまり好きな表現ではないのですが、復帰には通称『乗り越えなきゃいけない壁』がいっぱいあると思います。大変なことがあるけど、『あなたという存在から水泳がなくなっても、あなたからスポーツがなくなっても、あなたはあなたでとても素敵だよ』って。それは一番伝えたいことですね」

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