[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

LGBTを公表した滝沢ななえ 「美人すぎるバレーボール選手」と呼ばれた過去の苦悩

滝沢さんは「誰も隠す必要のない世界になれば」とスポーツ界の未来に願う【写真:荒川祐史】
滝沢さんは「誰も隠す必要のない世界になれば」とスポーツ界の未来に願う【写真:荒川祐史】

スポーツ界の未来に望むLGBTのカタチ「誰もが本当の自分を隠す必要なく、応援を」

 しかし一度、二人の関係が大きく揺れた時期もあった。子どもを持つ、持たない、の意見にすれ違いが生じるようになり、話し合いを重ねた。

「彼女的には頭では理解していても、友達が出産をしたり、SNSで子育ての様子を見たりすると、『私の人生はこれでいいのかな』という迷いが生まれたのだと思います。それで意見が合わなくなった時期もありました」

 彼女が愛犬「ぼたん」を家に連れてきたのはその頃だった。ぼたんが現れたことを機に、二人の関係性も大きく変わったという。

「最初の頃はカップル、わんちゃんが来てからは家族って感じです。もうね、一切『デート』というワードが出てこない(笑)。次の休みは家族でどこに行く? 家族の時間をどう過ごす? と、二人の会話のなかでも、自然と『家族』という言葉が出てきます。

 よく『犬は子どもじゃないんだから』と諭されるのですが、私たちもそれはわかっています。だけど、私たちにとっては凄く大切な存在。わが子のように、大事に育てていきたい」

 滝沢さんもパートナーも、今年34歳を迎える。子どもに関してはもう一度、二人で向き合う日が来ると感じている。

「その心構えは私もしていて、自分なりに考えてもいます。

 私は自分が女であることで、彼女の望みを叶えてあげられない部分がある。例えば、今の日本では籍を入れられないとか、二人のDNAを持つ子どもは持てないとか、正直、男性には敵わないな、みたいに思うところもあるんです。

 だから、それ以外のところで、どうしたら彼女にとって幸せな暮らしができるのかを、いつも考えています。私は彼女のご家族ともちゃんと付き合っていきたいんですね。そのためにはまず、彼女が幸せであることが大事ですから」

 結婚の形、家族の形は様々だが、自分たちにはステレオタイプの家族の形がない分、二人らしい幸せの形を作りたい、と話す。

「今の幸せは今の形。でも、時が過ぎれば、考え方も感情も変わってきます。その時にまた、二人で話し合い、新しい形に向かっていく。そうやって自分たちの形を、どんどん築き上げていきたいですね」

【「LGBT」について語った滝沢ななえさんが未来に望む「女性アスリートのニューノーマル」】

「アスリートたちはどれだけ自信を持って試合に臨めるかが、プレーに大きく影響します。ファンからの声援、言葉はアスリートの力です。本当の自分を明かした選手が、ありのままの自分を応援してもらえたら、絶対に自信になるし、すごく前向きになれます。選手の誰もが本当の自分を隠す必要がなく、選手がカミングアウトしても、ファンは変わらず応援する。そんな世界がいつか当たり前になればファンや選手だけでなく、スポーツ界全体にも良い影響があると思います」

■滝沢ななえ / Nanae Takizawa

 1987年9月22日生まれ、東京都出身。八王子実践中・高と進み、高校2年時に春高バレーでベスト8進出。卒業後、V・プレミアリーグ、パイオニアレッドウィングス(06-09年)に入団。09年、V・チャレンジリーグ上尾メディックスに移籍し、13年7月に現役を引退した。その後、バレーボールスクールのコーチを経てパーソナルトレーナーに転身。19年11月、東京・六本木にパーソナルジム「PERSONS Training Salon」を開業する。2017年、出演したテレビ番組で、レズビアンであることを公表。スポーツ界では数少ない、セクシャル・マイノリティであることを公表している一人。

<「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」オンラインイベント開催> 最終日の14日に女子選手のコンディショニングを考える「女性アスリートのカラダの学校」が開かれる。アスリートの月経問題について発信している元競泳五輪代表・伊藤華英さんがMC、月経周期を考慮したコンディショニングを研究する日体大・須永美歌子教授が講師を担当。第1部にはレスリングのリオデジャネイロ五輪48キロ級金メダリストの登坂絵莉さん、第2部には元フィギュアスケート五輪代表の鈴木明子さんをゲストに迎え、体重管理、月経、摂食障害などについて議論する。参加無料。詳細(https://the-ans.jp/event/147825/)。

(「THE ANSWER的 国際女性ウィーク」3日目は「女性アスリートと摂食障害」、フィギュアスケートの鈴木明子さんが登場)

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)


W-ANS ACADEMY

1 2 3 4

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
UNIVAS
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集