[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

ラグビー日本、難敵イングランドから奇跡を起こす条件 W杯“30点差快勝”に潜む準備不足の現実

チリ戦前半のプレーに感じさせた準備不足

 その原因の1つが、チームの連係の不完全さにある。7、8月の国内での6試合でも課題に浮上していたが、チャンスで素早くボールを展開するのが信条のチームのはずが、そのボール回しの中でパスミスが多く、スコアに至らないケースが目についた。

【注目】一度だけの人生、好きなだけスポーツを スポーツを楽しむすべての女性を応援するメディア「W-ANS ACADEMY(ワンス・アカデミー)」はこちら

 国内での1試合平均得点17.6、平均トライ1.8個は、アタックを武器にするチームとしては物足りない。チリ戦での6トライ、42得点は見違える数値だが、対戦相手が世界ランク22位の初出場ということを踏まえれば、イングランド戦へ向けては、スコア以上に80分間の中でのプレーや、先に挙げたスタッツからチームと選手個々のパフォーマンスも参考にして評価するべきだろう。

 チリ戦でのパフォーマンスを見ると、得点力の低さの要因となるプレーを、本番のW杯第1戦でも露呈している。

 前半18分に敵陣でPK(ペナルティーキック)を獲得したが、3点がほぼ確実なPG(ペナルティーゴール)を狙わずタッチキックを選択。ここから日本代表の得点源の1つでもあるドライビングモールでトライを狙ったが、モールを組むためのクリーンキャッチ(ラインアウトからジャンパーが正確に捕球すること)に失敗。再び相手の反則でPKを得てタッチキック→ラインアウト→モールとトライを狙ったが、モールで前進できずに相手ボールのスクラムになってしまった。

 前半24分にも、相手がイエローカードによるシンビン(10分間の一時退場)となったが、再び選んだラインアウトからのモールは、今度はこの試合で高いワークレートを印象づけたチリのHOディエゴ・エスコバルにボールをもぎり獲られた。26分のブラインドサイドからWTB松島幸太朗(東京サントリーサンゴリアス)がラインアウト後方に走り込むスペシャルプレーもノットストレートと、準備不足を感じさせた。

 指揮官がコメントしたように、多くの選手がW杯の初戦という緊張感の中でプレーしたのは間違いないため、プレーの精度については差し引かなければいけないのかもしれない。

 だが、初戦どうこうよりも、次の相手がイングランドというのが直視すべき現実だ。アルゼンチンも倒し、日本が所属するプールDで“最強の敵”に浮上したことを考えれば、完成度、プレー精度のピークを第2戦に持っていかなければならないのは間違いない。前後半ともにチリに先制トライを許すような状態のまま、対峙していい相手ではないのがイングランドだ。

 日本代表の完成度がまだ足りない現状については、本サイトで12日にアップした記事でも書いたように、ブラウンACも「W杯で勝ち進んでいくには遂行力が足りないと思う。ミスを減らさないといけないし、自分たちのプレーで得点に繋げることが大事。これに関しては時間をかけるしかないと思っている」と認めている。

1 2 3 4

吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集