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ラグビー日本、難敵イングランドから奇跡を起こす条件 W杯“30点差快勝”に潜む準備不足の現実

日本が選び続けたPGを狙わない選択

 チームの完成度と同時に、戦略面でも課題を残した。この試合は序盤戦からチリ陣での相手の反則でも、日本はPGを狙わず、タッチキックからラインアウトを選び、モールでトライを狙おうとするシーンが続いた。

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 ラグビーでは、厳しい試合になるほど着実にスコアできるキックでの3点の奪い合いになる。チリ戦前日のゲームでも、イングランドが9個のPG、DG(ドロップゴール)だけでアルゼンチンを沈めているように、W杯のようにハイレベルな大会では、どんな状況でも確実に加点して、1点でも相手をリードしたいというゲームプランでPGの選択が増える。

 だが、日本はこの“セオリー”とは異なる選択をしたのだ。この選択について、PR稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ)はこう説明している。

「PGで得点をするという選択肢ももちろんありましたが、今日のゲームプランは敵陣に留まり続ける、つまりタッチキックでしっかり自分たちの準備しているものを出して、スコアすることだった。ただ、スコアが重ねられない時間も続いていたので、そういうミスを減らしていかないといけない」

 CTB中村亮土(東京SG)も「ゴール前に行ったらトライが取れるという分析だったので、(PGではなくタッチキック狙いは)試合前から決まっていたゲームプランでした」と話しているように、3点ずつ加点するのも定石だが、敵陣で戦い、分析でスコアできると判断したモールで勝負するのが、この日の日本代表にとってはセオリーだったということだ。

 だが、先にも触れたように、トライチャンスのラインアウト、モールからのミスで得点に至らないプレーを何度も見せたのが、9月10日時点の日本代表の完成度というのが現実だ。イングランド相手に、日本代表がチリ戦のようなPGを狙わない戦い方をするとは思えないが、第1戦は準備の不十分さを感じさせる戦いぶりだった。

 一方で、戦力と選手のパフォーマンスを見れば前向きな兆しもある。LOアマト・ファカタヴァ(リコーブラックラムズ東京)が2トライと活躍して、今夏の国内戦でのデビューから継続して好調をキープ。FLリーチ・マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)も、タックル回数15回(成功率83%)と両チーム中3位の仕事量を見せるなど充実している。国内戦では本調子ではなかったSO松田力也(埼玉WK)も、キック、ゲームメークと安定感は増している。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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