日本と真逆環境で強くなったボクサー中谷潤人 スパー相手はランダム、犬もいて…LA合宿に潜入
日本では得られないもの「戦うことに特化している選手が多い」
中谷もウォーミングアップを済ませ、リングに上がった。次戦の挑戦者と同じサウスポーと10回、右構えの選手と2回の計12回、各インターバルは30秒。次第にヒートアップし、鈍いパンチ音が室内に響いた。「いつも通りですよ」。汗を拭う表情は充実感に溢れていた。
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日本のボクサーはジムに所属するが、ここでは個別のチームで活動する。トレーナーらを連れ、その場でスパー相手を探すことも。右、左などの条件が合えば拳を交える。相手がランダムに決まるため、「いろんなタイプの選手とできる」と中谷。ノックアウトボクシングジムはあくまで練習場ということだ。
日本なら当たり前にある3分を計るタイマーもない。リング横にランプがあり、ラウンド中の緑、残り30秒の黄色、30秒のインターバル中を示す赤の3色が光るだけ。残り時間がわからない環境は、精神的に追い込まれていきそうだ。
タイトル保持者やランカーもいる。三重出身の中谷は15歳で単身渡米。地元や現在所属する神奈川・相模原では、定期的に実力者を呼ぶのは難しい。この環境だからこそ、若くして豊富な技術が身についた。
「やっぱり強い選手が集まってくるので刺激的です。基本的に実戦練習をします。実戦慣れしている選手が多いので、どういう戦い方をすれば相手が嫌がるか、そういったことをより深く知っている選手が多い。戦うことに特化している選手です。その辺りは日本と違うと思います」
日本では得られないものがある。だから、中谷は毎回のように試合前に米国で調整する。渡米当初は言葉もわからず、「誰?」という視線を向けられた。「ボクシングで見せるしかなかった」。拳で仲間をつくり、今では英語でコミュニケーション。世界で評価される選手の背景を垣間見た。
余談だが、ジム内には犬までいた。日本ではあり得ない。10月14日のV2戦でも、豊富な海外経験に裏打ちされた強さを発揮してくれそうだ。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)