井上尚弥「記録はさほど興味がない」 最強ライバル・ドネアだから生まれる戦う意味
WBSS決勝で交わした拳の会話「気持ちの面で凄く受け取ったものがある」
19年11月のWBSS決勝は敬意に満ち溢れたものだった。同8月末の記者会見、試合10日前の公開練習などの公式行事。両者は「尊敬」「敬意」などの言葉を何度も繰り返した。壮絶な殴り合いの末、井上は右眼窩底と鼻骨を骨折。ドネアの顔も紫色に腫れ上がった。多くの海外メディアに「年間最高試合」と称された死闘。当時、井上はリング上で交わした抱擁についてこう振り返っていた。
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「ドネアを尊敬してやってきたので、試合が終われば関係なく称えようと思った。ドネアじゃないとこんな感動はなかった。気持ちの面で凄く受け取ったものがある。拳で語っていることが多いので、言葉では語れないですね。36分間のぶつかり合いで感じたものが多い」
昨年6月、ドネアは米ラスベガスで行われた井上の試合を生観戦。互いに敵意は全くなかった。この日の会見では、スクリーン越しに「イノウエさん、最大の敬意を贈ります。再び戦士として2人でリングに立てることを嬉しく思う。怪我なく全身全霊で戦えるように幸運を祈る。ドウモアリガトウ」と笑顔で健闘を誓った。
残り2か月と少し。井上はこれまでスパーリング相手の選定は陣営の大橋秀行会長に任せていたが、今回は初めて自ら指名した。「会長にお願いした。その点においても、このドネア戦はいつもと違うなと感じている」。あの日交わした拳の会話。2年7か月の時を経て、リングで続きを語り合う。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)