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超難関・北大工学部卒の右腕が韓国でプロ野球選手に 大学まで軟式、長大聖の超異色キャリア「NPBに行ければ…」

少年時代のチームメート、小林(左)と蔚山で再会した長【写真:羽鳥慶太】
少年時代のチームメート、小林(左)と蔚山で再会した長【写真:羽鳥慶太】

現役引退のはずが韓国へ…最終目標は「大観衆の前で」

「25、26歳までやってダメだったら辞めようと最初は思っていました。ところが……」。韓国プロ野球が秋季教育リーグを始めることになり、日本の独立リーグから選抜チームが派遣されることになった。ここに加わった長は、現在本拠地としている蔚山の球場で好投を披露する。韓国プロ野球が新設したアジア枠に「可能性がある」という話も持ち込まれた。群馬で会長付特別補佐を務める色川冬馬氏に「ここでやめてももったいない。もうちょっといろんな経歴をつけたほうが、社会に戻っても面白い人材になれる」と背中を押された。2月に群馬でトライアウトを受け、蔚山行きが決まった。

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 意外な出会いもあった。日本の2軍球団「オイシックス」から先に蔚山入りが決まっていた小林珠維投手とは2歳違い。かつて同じ登別市に住み、少年野球の仲間だった。投打で対戦したこともあり、長は「僕は全然抑えられないくらい凄い打者でした」。小林は東海大札幌高からソフトバンクのドラフト指名を受けてNPBの世界へ。そこから紆余曲折を経てここでプレーする。「全くここまでの道は違いますけど」という2人が再会するのも、野球の面白さだ。

 韓国では、その小林と2軍の奪三振王を競うほどの好成績を残している。今季各球団が採用したアジア枠には、好成績を残せていない選手も多い。交代はシーズン1度だけ可能で、その候補として長の名前もメディアに上がるが、本人はいたって冷静だ。

「もちろん今年韓国の1軍に上がって、来年NPBに行ければベストではありますけど、今の自分の実力的に、まだ足りない部分があるのはちゃんと自覚しています。現実的にはまず、ここで1軍に上がれるかどうか、というところだと思います」

 日本で大観衆の前で投げてみたい、という純粋な夢がある。異色のルートを歩み、26歳になってもまだその夢を追えるところにいる。「すごく運が良かったなと思います。硬式を始めようとしたのがたまたま、北海道に独立リーグが出来ていたタイミングですし、群馬に行けたのも運と縁があったから。そして去年で辞めようと思っていたのに気づいたらここでやっているのも、本当に恵まれているなと感じます」。

 国立大学、しかも理系の学部を出ているとなれば、就職に困ることはまずない。長も「行く先々で『なんでこんなところにいるの?』とか『いいところに就職できたんじゃないの』とは言われます」と苦笑いするが、このキャリアを歩んできたことへの答えは一つだ。

「後悔は全くないです。それこそ、人と違うことをしてきたおかげで、いい経験をできているとものすごく感じるので。こんなところまで来るとは正直思っていなかったですけど、韓国で野球で生活するなんてまずないので。間違いなく50、60歳になっても『こういう選択をしてよかったな』と思うはずです」

 初めての海外生活に「毎日困ることばかりです」と苦笑い。ただ長には、日々の苦労も軽やかに乗り越えていく強さがある。韓国で作ってもらったグラブにはハングルで「タイセイ」と入れた。「ナガ、はあんまり良くない意味だと知って……」。韓国語で「ナガ」は「出ていけ」という意味だ。いたずらっぽい笑顔に、異国で積み重ねた自信がのぞいた。

(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)

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