日本ラグビーが世界に及ぼした甚大な衝撃 12年前と境遇が酷似、夏のV字回復&赤竜狩りへ「奇襲攻撃をかける」――エディーHC単独インタビュー
ラグビー日本代表を率いるエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が今シーズンをスタートした宮崎合宿で単独インタビューに応じた。復帰2シーズン目の今夏は、準代表「ジャパンフィフティーン(JXV)」がマオリオールブラックス(MAB)を迎え撃ち、その後“レッドドラゴン”と呼ばれる伝統国ウェールズ代表との2テストマッチ(7月5日=福岡・ミクニワールドスタジアム、同12日=兵庫・ノエビアスタジアム神戸)が待ち受ける。HC復帰1シーズン目の昨季はテストマッチ4勝7敗と苦闘を強いられた指揮官にとって、ウェールズはHC1期目の2013年に金星を奪った相手。再びミラクル、そしてチームをV字回復させるには絶好の相手との真夏の決戦を、どう戦うのか。勝負師エディーに“赤竜狩り”の極意を聞いた。(取材・文=吉田 宏)

7.5&12に伝統国ウェールズと2連戦、エディーHCは真夏の決戦をどう戦うのか
ラグビー日本代表を率いるエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC)が今シーズンをスタートした宮崎合宿で単独インタビューに応じた。復帰2シーズン目の今夏は、準代表「ジャパンフィフティーン(JXV)」がマオリオールブラックス(MAB)を迎え撃ち、その後“レッドドラゴン”と呼ばれる伝統国ウェールズ代表との2テストマッチ(7月5日=福岡・ミクニワールドスタジアム、同12日=兵庫・ノエビアスタジアム神戸)が待ち受ける。HC復帰1シーズン目の昨季はテストマッチ4勝7敗と苦闘を強いられた指揮官にとって、ウェールズはHC1期目の2013年に金星を奪った相手。再びミラクル、そしてチームをV字回復させるには絶好の相手との真夏の決戦を、どう戦うのか。勝負師エディーに“赤竜狩り”の極意を聞いた。(取材・文=吉田 宏)
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気温30度を超える猛暑の南国でも、指揮官は満面の笑みで連日ピッチに立ち続ける。
「ウェールズ戦まであと14日。(合宿途中から)リーチ(マイケル=東芝ブレイブルーパス東京FL)、ワーナー(ディアンズ=同LO)ら重要な選手も合流しました。藤原(忍=クボタスピアーズ船橋・東京ベイSH)もそうですね。若い明治大学の(竹之下)仁吾(FB)も入って来た。ここからまたしっかり舵取りをして、チームを進むべき方向へ向かわせたい」
話を聞いたのは合宿始動から5日目の6月20日。まだMAB戦へ向けた戦術も落とし込まれていない段階ながら、指揮官はその先のレッドドラゴンとの2テストマッチに並々ならない意欲を見せた。6月28日に対戦するMABは、正代表ではないもののニュージーランド先住民系代表として世界でもトップ10クラスの実力を持つが、采配はコーチングコーディネーターのニール・ハットリーに委ねた。MAB戦への準備に費やす時間も惜しんで、ウェールズ打倒に指揮官自ら専念するためだ。東京・秩父宮でのMAB戦も、当日会場観戦はするものの、チームスタッフに「試合当日中に宮崎合宿に返りたい」と訴えるほどの熱量で赤竜打倒に燃えている。
ウェールズとの対戦が決まってから、指揮官は事ある毎に12年前の“衝撃”に触れてきた。当時世界ランキング5位だったウェールズを、発足2シーズン目の第1次エディージャパンが迎え撃ったテストマッチ2連戦。第1戦(6月8日、大阪・花園)で18-22と肉迫すると、1週間後の第2戦で23-8と金星を奪い取った。当時の日本代表は、それまでの7度のワールドカップ(W杯)出場で勝利は1991年第2回大会のジンバブエ戦の1勝のみ。世界ランクは15位だった。来征したウェールズが全英・アイルランド代表ライオンズに主力を奪われていたとはいえ、世界トップ10の国には歯が立たないというのが当時は常識だっただけに、世界に及ぼした衝撃は甚大なものだった。そのインパクトは、世界以上に国内ラグビー関係者や、代表クラスの選手たちに影響を及ぼし、本気で世界に目を向けさせたという点でエポックメーキングな1勝となった。この勝利が起点となり、2015年W杯での躍進へと繋がった。
エディーは、6月12日の代表メンバー発表会見でも「あの試合が日本代表にとってのブレイクスルー(突破口)になった」と振り返ったが、同じような衝撃を今回の2テストで狙っている。それは、対戦相手が同じというだけではなく、日本代表および指揮官が置かれた境遇があまりにも2013年と酷似しているからだ。
チーム発足から2シーズン目、初年度に期待された成績を残せず、代表チーム内外から不安や不平も漏れ出してきた。この負の流れを拭い去って、代表強化がV字回復したのが13年の金星。今回も、同じような効果を国内、そして世界に投げ掛けることが出来れば――。そんな思いが、指揮官の発言にも、統括するラグビー協会にも漂っている。