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日本に2度目のラグビーW杯はやってくるのか 2035年に照準も…大会は巨額ビジネス化、WRとの“綱引き”に

ワールドラグビー(WR)のブレット・ロビンソン新会長が来日中の2月3日、都内でメディアブリーフィングを行った。オーストラリア生まれ。史上初の南半球生まれの新会長としての意欲やこれからの取り組みについて説明する中で、日本が目指す2度目のワールドカップ(W杯)開催に質疑、議題が集中した。オリンピック、サッカーのFIFA W杯に次ぐ世界3番目のスポーツイベントと化し、世界各国・地域が開催に手を挙げる中で、国内のラグビー人気醸成に大きく貢献した2019年大会の再現は果たして可能なのか。世界ラグビーのトップの言葉から、その可能性を考える。(取材・文=吉田 宏)

2019年W杯でアイルランドに勝利し歓喜する日本代表とファン【写真:荒川祐史】
2019年W杯でアイルランドに勝利し歓喜する日本代表とファン【写真:荒川祐史】

来日したワールドラグビーのロビンソン新会長の言葉から可能性を考える

 ワールドラグビー(WR)のブレット・ロビンソン新会長が来日中の2月3日、都内でメディアブリーフィングを行った。オーストラリア生まれ。史上初の南半球生まれの新会長としての意欲やこれからの取り組みについて説明する中で、日本が目指す2度目のワールドカップ(W杯)開催に質疑、議題が集中した。オリンピック、サッカーのFIFA W杯に次ぐ世界3番目のスポーツイベントと化し、世界各国・地域が開催に手を挙げる中で、国内のラグビー人気醸成に大きく貢献した2019年大会の再現は果たして可能なのか。世界ラグビーのトップの言葉から、その可能性を考える。(取材・文=吉田 宏)

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 昨年11月に就任したラグビー界のボスは、初めての外遊に日本を選んだ。

「昨年の会長選ではJRFUの多大なるご支援を頂きましたので、今回、会長になって初めての訪問先が日本になったことは私にとっては当然のことだと考えています」

 選手としてスーパーラグビー・ブランビーズで主将を務め、オーストラリア代表でも16キャップを持つ。ブランビーズ時代は、現在日本代表を率いるエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチの下でもプレーして、哲学博士号を得たオックスフォード大でも選手として活躍してきた。会長選では元フランス代表アブデラティフ・べナジとの決戦投票が27-25という僅差だったことを考えれば日本票への感謝は間違いないだろうが、それが最初の訪問地に選んだ第一の理由ではない。

 ブリーフィング冒頭に、日本協会の土田雅人会長はこんな挨拶をしている。

「今回(の会長来日)は、重要なテーマとして話し合いを続けていますが2035年の男子、2037年の女子W杯日本開催へ向けてです。そのためにも、日本協会の財政安定はもちろん、組織力強化が大変重要です。代表チームの活躍は必須となり、男子チームはもちろんですが、女子ラグビーのさらなる発展へ向けてしっかりと取り組んでまいります」

 今回の訪日の大きなテーマが「W杯日本大会」なのは間違いない。2022年の就任から男子は2度目、女子は初となるW杯の日本開催を公言してきた土田会長だが、JRFUも票を投じた新会長の就任は大きな追い風と受け止めている。退任時に72歳だった前任のビル・ボーモント卿から55歳に若返り、改革に積極的な南半球出身の初めての会長でもある。伝統と格式を重んじる傾向のあるヨーロッパ系理事(協会)以上に、ラグビー界では“新興勢力”の日本にはプラス材料になるだろう。

 では、日本が2度目のW杯開催を熱望していることを、WR首脳はどう受け止めているのか。JRFUに聞くと、こんな訪日理由だという。

「協会を含む日本のラグビー関係者、スポーツ関係者、スポンサー等との面会、打ち合わせを目的に来日されている。新会長にいち早く来日いただくことは、協会の希望でもあった」

 説明通り、日本滞在中にはJRFUを始めスポーツ振興に関わる関係省庁、協賛企業を訪問している。今回の訪日には、WRのアラン・ギルピンCEO(最高経営責任者)も帯同している。19年日本大会前後には頻繁に来日して、開催実績のない日本の組織委員会をサポートしてきた中心人物だが、今回は2019年大会を共に成功へと導いた日本側の関係者との親交だけではなく、最高経営責任者として、次の日本大会成功へ向けた欠かせないステークホルダーとなるであろう財官界とのコミュニケーションを深め、情報を共有したい思惑があったのは、ブリーフィングでのCEO自身のコメントがよく物語っている。

「2019年大会は、日本の皆さんが一部の懐疑的な声を成功で黙らせた。今、JRFUと日本の皆さんと、過去のことだけではなく将来について話をしています。将来のW杯、将来の国際大会、そして日本ラグビーの今後の発展、繁栄をしていくことについてです。それは15人制も、7人制もです。そしてリーグワンは、世界でも比べようのない成功を収めている。私たちが本当にわくわくしているのは、JRFUの皆さんと将来のW杯について話をしているということです。時間をかけて、しっかりと話し合い、方向性を決めていきます」

 JRFU、WR双方首脳の言葉から、2度目の日本大会がかなり現実的なのは間違いない。新会長を迎えたWRが、日本大会開催のために重要な国内組織を訪れ、コミュニケーションを深めたのが今回の訪日の目的の一つだった。ブリーフィングでのWR側、日本側それぞれのコメントからは日本開催自体については相思相愛と印象づけられたが、同時に微妙な“綱引き”があることも浮かび上がる。土田会長が開催年を「2035年」と単年で語ったのに対して、ギルピンCEOはこう話している。

「具体的なゴールも(JRFUから)聞いています。男子のW杯は2035年もしくは39年、より早くという声もありますが、そこを目標にしているということです」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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