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ラグビーにレンタル移籍導入、“助っ人化”に懸念 脳震盪の度合を数値化する最新科学テクノロジーとは

スマートマウスガードに関するブリーフィングで紹介されたこのテクノロジーを導入する主要なリーグ。世界の名だたる大会の大半で使われている【写真:吉田宏】
スマートマウスガードに関するブリーフィングで紹介されたこのテクノロジーを導入する主要なリーグ。世界の名だたる大会の大半で使われている【写真:吉田宏】

前シーズンはW杯明け、観客数の推移は?

 ここからはグラウンドを離れた振り返りになるが、序盤戦の観客数にもスポットを当てたい。

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 ディビジョン1の第5節、30試合を消化した時点での1試合平均観客数を見ると、昨季の1万459人から8539人と減少している。この数字は、昨季ディビジョン1レギュラーシーズンの1試合平均観客8929人に近い。先に紹介したように得点差が減少してクロスゲームが増える中での減少は残念だが、チームの経営サイドではこの苦戦を想定していたという声もある。BL東京の荒岡義和社長は、オフシーズンに今季の観客動員についてこんな見通しを語っていた。

「2023-24年シーズンはワールドカップ(W杯)明けの開催だった。このため、日本代表選手や世界で活躍した選手の加入が、集客面ではプラス材料だったが、新シーズンはこのような追い風はない。集客面でも厳しい部分があるのではないか」

 理想としては外部要因に関わらず観客数を増やしたいところだが、このような“荒岡理論”をベースに考えると、各チームが5試合を終えての平均2000人減は比較的妥当な数字なのかもしれない。多くのチームが昨季比での減少を認め、深刻に受け止めている一方で、チームスタッフからは「苦戦の中で、なんとか頑張れている」という声も聞く。

 リーグワン広報担当者も「楽観はしていないが、そこまで悲観もしていない観客数。今季はワールドカップ(W杯)がないことは当初から懸念としてありつつも、現状ディビジョン1は去年の8割程度の集客という状況だ。ディビジョン2では、チーム数増加を踏まえても観客数は伸びていて、ディビジョン3も同様に着実な積み上げはしっかりある」と一定の評価をしている。ディビジョン2では、共にディビジョン1経験チームだが、レッドハリケーンズ大阪が昨年12月に行われたNECグリーンロケッツ東葛との開幕戦で9000人を超える観客を集め、今年1月11日にはGR東葛が本拠地の千葉・柏の森公園総合競技場での日野レッドドルフィンズ戦で1万646人の観客を集めるなど奮闘をみせている。

 このような成長の理由を、同広報は「ディビジョン1のみならず2、3でも、外的な要因に左右されない、シーズン毎の(集客の)着実な積み上がりはしている。1年目は皆手探りだったが、チケット販売などのデータを取るなど様々な手を打ってきている。地域に根差した取り組みなどで、チームがファンをしっかりと育てていることなどの表れではないだろうか」と指摘。リーグ側でも、招待客への告知、募り方などのノウハウ、リーグや協会と同じチケット販売フォーマットの提供などで連携、サポートはしているが、「あくまでもチーム側の努力」(同広報)と説明する。

 ディビジョン1でも、開幕節を見ると1試合平均で昨季の1万1762人から1万2244人と500人弱の増加をみせている。微増ではあるが、先ほどの荒岡理論、そしてリーグ集客の追い風としても期待される日本代表の苦戦続きなど、動員に拍車をかける要素が乏しい中での増員は一定の評価が出来るだろう。

 シーズン比で見れば、昨季は第2節で3万人台の集客が2試合あったことが大きかった。この集客は横浜Eが神奈川・日産スタジアムでのホスト開幕戦で動員をかけ3万1312人の観客を集めたこと、そして東京SGも東京・味の素スタジアムでの開催に3万1953人と集客に力を入れたことが大きかったが、今季はそこまで爆発的な動員が出来なかったことも響いている。チーム側から集客面で不評だったのが、今季は第2節が過去には開催のなかった年末(12月28、29日)に行われたことだ。「年末の時期だと、冬休みではあるが帰省などもあって観客動員は難しい」と指摘するチーム関係者の声も複数あった。この異例の日程については、レギュラーシーズンが2試合増加されたこと、リーグ期間前後の日本代表の活動などで詰め込まれたものだった。この過密日程については、リーグ側でも2028-29年シーズンからの秋開幕も構想しているが、年末年始開催については、今季のマーケティングも踏まえて早急な改善も必要かも知れない。

 一方で、観客動員については数字だけを睨んでも意味はないだろう。大前提として、ホストスタジアム問題があるからだ。リーグワンは発足時から、それぞれのチームにホストエリア、ホストスタジアムの確保を求めているが、多くのチームが4シーズン目を迎えた今季もスタジアム確保に苦戦を強いられている。

 企業(学校)ベースで進化してきた日本のラグビーは、リーグワンが掲げる地域に根差したチーム作り、運営に取り組んでいる最中だ。公式戦開催が可能な規模のスタジアムの確保は、どの地域でも既に根付いているJリーグが先行しているのが実情だ。そのため、今季開幕まで2か月を切ったばかりの昨年10月24日時点で、キックオフ時間、試合会場が全て確定していたのは全18節の中で6節までに過ぎなかった。第5節を終えた1月第4週の時点でも、14節以降の時間、会場が未定の試合が半数を超えている。このような状況で、チケット販売、ファン動員にどこまで力を注げるのか。チケット販売なども担当するあるチーム関係者は「チケットを買っていただくにも、テレビ中継の相談をするにも、キックオフ時間や会場が未定では、強くお願い出来ない」とこぼしている。

 集客、つまりチケット販売についてはすべてホストチームが担うのだが、リーグワン発足前の段階から、各チームが優先使用権を持つ本拠地を確保するのが相当難しいことは、ラグビー関係者誰もが周知のことだった。リーグワンの準備段階では、リーグ側もスタジアム確保に協力する旨を語っていたが、多くのチーム関係者は「スタジアム探し、確保でリーグから協力はほとんどない」と苦言を呈している。

 リーグ関係者も「リーグ側から働きかけが出来ているかというと、出来ていない。スタジアム確保のために具体的に何かあるかというと、画期的な解決策はない。そこは地道にやるしかない」と語っている。この厳しいスタジアム確保問題を考えれば、個別チームによる努力はもちろん必要だが、リーグや、場合によってはラグビー協会が共同で取り組むべき急務だろう。前身のトップリーグ時代は、協会でスタジアム確保なども含めて地方自治体との連携を図る担当者もいた。残念ながら現時点でリーグ、協会内にそのようなポストはないが、スタジアム確保はチケット販売や集客問題の一丁目一番地だ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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