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リーチ・マイケルが見た新生ラグビー日本代表 第2次エディージャパンで指揮官と再び奇跡に挑む旅

天才肌の司令塔とリーチも注目する伊藤耕太郎。松田、李の現役代表に挑戦する【写真:吉田宏】
天才肌の司令塔とリーチも注目する伊藤耕太郎。松田、李の現役代表に挑戦する【写真:吉田宏】

インパクトを感じた選手としてリーチが真っ先に名前を挙げた選手とは

 ゲーム形式で行われるメニューなどで、選手が目の届かないプレーも見逃さないエディーの抜け目のなさ、視野の広さは2015年までと変わらない。そんな指揮官とのコンビ再結成で、リーチにも心境の変化が訪れている。今回のキャンプの参加メンバーリストで、リーチのポジションは定位置のFL/NO8ではなくLOになっている。リーチ本人は囲み取材で「最初は(表記)ミスだと思いました」と周囲を笑わせたが、このポジション変更には予想以上に前向きだ。

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「これからはバックローと4番(左LO)でやっていきます。テストマッチではバックロー(FW第3列)が多くいた方が勝てるというか、よりいいラグビーが出来る」

 超速ラグビーを標榜するチームでは、LOも従来以上にバックローのような機動力が求められることを理解した上で、リーチは新たな挑戦を受け入れているのが判る。「予想以上」と書いたのは、リーチは日本代表では不動の第3列としてプレーしてきたからだ。本人も「最後にLO でプレーしたのは東海大時代」と明言するように、代表以外でもシニアレベルのチームでは、ニュージーランドの強豪チーフスでプレーした時も含めて常にFL、NO8が定位置だった。実は昨秋のW杯へ向けた夏の強化合宿で、当時チームを率いていたジェイミー・ジョセフHCからLO挑戦を打診された時は、「LOで選ぶなら(代表メンバーを)外してもいい」と拒絶したリーチだが、今回は兼務を受け入れているのだ。

「(合宿に)着いてすぐに言われましたが、何でもやりますよ。問題はスクラムですね。(LOのポジションで)スクラムを組める自信ないので。でも、可能性の引き出しをもう1個増やせるんじゃないかなと思いました。これでスクラムを組めるようになれば、1つの武器になる。歳を取ると、これから長く(代表チームで)生きていくために、いろいろなポジションを出来るといい」

 エディー自身は、リーチのLOでの起用についてこんな考え方を語っている。

「(4番と6番を兼務する)そういう傾向になっている。ブラインドFLと左のLOが出来る選手を求めているのです。我々は速いプレーをしたいので、バックローみたいなLOが必要です。だからリーチとは、しっかりと話し合っています。10番だよと。6プラス4でね」

 超速ラグビーでは、選手各々が自分のポジションで、より速く、早く動くだけではなく、従来とは異なるポジションで、持っているスピードを生かすことも指揮官の構想の中にある。LOではあるが、求められる仕事は4人目のバックロー。こんな位置づけで、エディーとの間でしっかりとコミュニケーションを取れているからこそ、リーチも半年前とは正反対の姿勢でオファーを受け入れている。

 グラウンド練習では、9年前までと変わらず指揮官が選手たちの中に入り込んでゲーム形式のドリルを行うなど、コンセプトに掲げる「超速ラグビー」を落とし込み始めた。今回の招集メンバーが6月から本格化する代表(候補)に選ばれる保証はないが、2027年の次回W杯でベスト8を奪還するには、新しい力は不可欠なはずだ。リーグワン、大学で活躍した若手の中で、初招集ながら可能性とポテンシャルを印象づけた“素材“を挙げると、LO石橋チューカ(京都産業大1年)、NO8ティエナン・コストリー(コベルコ神戸スティーラーズ)、そしてSO伊藤耕太郎(明治大4年)の3人だ。

 ポジションはFW、BKと異なるが、リーチがインパクトを感じた選手として真っ先に名前を挙げたのが伊藤だった。

「たまたま練習で同じチームにいたけれど、チームの中でアタックをまとめてくれていたし、積極的に修正点を選手に話していた」

 常に動きながらパスを受け、自身のステップを武器にしたランスキルに加えて、長短パスを駆使して攻撃ラインを動かす才覚は、20代前半のゲームメーカーとして卓越した能力を持つ。多くの司令塔と戦ってきたリーチが、近場で一緒にプレーして掴んだ感触は大きな意味を持つ。合宿での実戦形式の練習で、すでにW杯も経験したSO李承信(神戸S)と10番として渡り合う姿は、松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ)も含めた現役代表司令塔と大きな格差は感じさせなかった。代表は離れているが、経験値や、クロスボーダー大会での判断力、ボールを動かす才覚で、国内ではレベルの異なる能力をみせる田村優(横浜キヤノンイーグルス)、そして多彩な攻撃アイデアを持つ天才肌の山沢拓也(埼玉WK)らも含めた27年へ向けた司令塔レースに食い込んでいく新たな素材だ。

 19歳で招集された石橋は20歳以下(U20)日本代表との掛け持ちでの参加だが、リーチは将来性を強く感じている。

「スピードがあって、サイズもあって、これから絶対伸びていく選手だと思います。昔の松島(幸太朗)みたいに、これからどんどん体が出来上がっていくはず。まだ19歳で、LO、バックローでプレーするためには、まだまだ体を大きく、強くする必要がある。でも、すごく真面目な選手で、いいものを持っている。プレー見ていると、ナチュラルにやっていけばいい」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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