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「ラグビーをさせたくない空気」に強豪校も危機感 中学年代で競技人口が減る要因とは

30年経っても苦しい状態が続く「1県1校制」

 1990年度の第70回大会で、花園は大きな節目を迎えた。それまでは複数県から1校が出場する地域があったが、70回の記念大会を契機に各都道府県の代表チームが戦えるように出場枠を増大。花園はようやく1県1校が参加する全国大会になった。高校ラグビーに携わる関係者、指導者にとっては悲願だったのは間違いない。自分自身が高校の指導者であれば、“1県1校制”はどうしても実現したい夢だと考えたはずだ。

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 しかし、先にも数字で示したように、地域大会でもわずか1、2試合で花園切符を手にする県も少なくなかった。実際には、1県1校という悲願を実現するために“背伸び“をしたのが70回大会での変革であり、それが30年を超えた今でも続いていると考えていいだろう。

 70回大会では“背伸び“だったものを、各都道府県内の部活の活性化により、数年、十数年という時間をかけて埋め合わせ、参加3校だった県が5校、10校へと増えていくことが、高校ラグビー界、指導者たちに課せられた宿題だった。もちろん、70回大会以前の県内で1位になっても、他県のチームとの出場決定戦に勝たなければ花園出場は叶わないという現実から、どの都道府県でも予選に勝てば夢の舞台で戦えるという環境の変化で、高校生のラグビー人口を広げようという期待もあったはずだ。だが、今回の鳥取県のケースが示すように、30年という時間をかけても、いまだに“背伸び”のままの1県1校が続いているのが現実だ。

 一部では以前のように複数県から1校を出場させるのがいいのではないか、という意見も耳にする。だが、個人的には賛成できない。確かに現実的に考えれば、1県で出場枠を争える状況ではないエリアがあるのも事実だ。しかし、この30年のトライアルではできなかった普及策、部員数・出場校数対策を、高校指導者、地域協会、そして中枢の日本ラグビー協会が、従来以上に力も意見も出し合って変えていくことを急ぐべきだろう。

 繰り返すが、この問題に特効薬はない。だからこそ、様々な立場の人たちが、今まで以上に連携し、結束力を強めて、実現できなかったプラン、新たなアイデアや可能性を模索し、実現可能なものを実践していくことが求められる。

 指導者や協会のスタッフには時間があっても、高校生1人ひとりに与えられた時間は3年間だ。もちろん、数年という時間をかけなければ実現できないものもあるだろう。だが、今着手できることは、今日からでも実行するべきだ。この春に高校を巣立っていく選手、来年卒業する部員のことを思えば、どこぞの人気塾講師ではないが、今やるしかない。

「ラグビーをやってきて良かった」

 こんな言葉を1人でも多くの高校生が語れるためには、彼らとともに、大人がどこまで本気で動き出すかにかかっている。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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