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日本ラグビー、代理人業の実態 外国人選手では「乱立状態」、関係者が警鐘鳴らす理由

ライセンス制導入を求める声も多い

 個人差、企業差はありそうだが、日本系のエージェントは生活面までサポートする“マネジャー型”が一般的で、海外エージェントの場合は、選手の契約に特化した交渉役が中心という性格もあるようだ。エージェントフィーと言われる仲介手数料に関しては、他のチームのGMも「契約交渉と別途に、チームに請求するのが慣例となっているが、本来はチームではなく選手側に支払い義務があるのでは」と違和感を語っている。ちなみに我々のような選手、チームを取材する立場だと、日本をベースに仕事をするエージェントと契約している選手に関しては、エージェントに直接取材の相談をするケースと、チーム(広報)が受け持つ場合が混在している。エージェントによる違いもあるが、具体的には日常の練習、試合などチーム活動の場での取材に関してはチーム主導、個別のインタビューのような場合はエージェントと、窓口が分けられているのが一般的だ。

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 日本のラグビー界でも確実に存在感を持ち始めたエージェントだが、実は、この業種を始めるための免許や規則は何もない。あなたが明日から名乗ればエージェントなのだ。もちろん、だからといってラグビーチーム、選手からエージェントとして認められるかは別問題だが……。

 冗談のような話だが、実際にチームやリーグ側でも、エージェントの乱立は気がかりな問題になっている。前出の1人目のGMは、「すでに誰が誰のクライアントかも分からないようなケースもある。それくらいエージェントが乱立した状態です。俺のクライアントだ、私のだという紛糾も海外の選手ではありますから。これが今後、(プロの)日本選手にも起こる可能性はあると思っています。なので、参入するエージェントの窓口を、ちゃんと絞って、やるべき人がやっているという形を作る必要はありそうです」と警鐘を鳴らす。

 チーム関係者からはエージェントの「ライセンス制」を求める声は多い。交渉の相手に、ある程度の身分保障が必要だという考え方は、通常のビジネスでは当然のことだろう。リーグワン側でもチームとの話し合いの中で、エージェントに関しては少なからず関心を持っている。実際に契約交渉を行うチームとエージェントとは異なり、直接の利害関係のないリーグだが、広報担当者は現在のエージェントの在り方については、このような見解を示している。

「原則として、エージェントは必要な存在という認識でいます。その中で、エージェント、選手、チーム、リーグが話し合いを円滑に進めるための制度が必要ではないかという認識で、そのスタートになるようなエージェントの登録制度のようなものが必要なのかというのが現状です。今後、リーグ内でも議論をしていくことになると考えています」

 では、実際にエージェント、チーム、選手、そしてリーグの間にはどのような課題があるのだろうか。多くの当事者が口を揃えて指摘するのが、リーグワンが設ける公式戦出場規約“カテゴリA”だ。中編では、それぞれの立場から見たカテゴリAと、この制度に伴う年俸高騰などの現状と問題点、そして「これから」への提言を当事者に聞いていく。(文中敬称略)

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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