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休部の宗像サニックス、なぜライバルからも愛された? 選手の姿に見えた敬意の理由

練習後のクラブハウス周りの風景は、まさに"ラグビーヘヴン"だった【写真:吉田宏】
練習後のクラブハウス周りの風景は、まさに"ラグビーヘヴン"だった【写真:吉田宏】

大切なのは「自分がどんなラグビーをしたいか」

 では、残された選手たちは、どんな思いでチームの最後のノーサイドまで戦い続けてきたのだろうか。松園監督に続いて話を聞いたのは、HO(フッカー)高島卓久馬副将。屋宜ベンジャミンレイ主将が4月3日のブルーシャークス戦で入院が必要な大怪我をしてから、最終戦までリーダーとして先頭に立ってチームを引っ張ってきた。

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「初めて休部の話を聞いた時はショックやったし、チームや選手で話し合う時間を作っても、気持ちが整理できていない選手はいっぱいいましたね。けどそこから、何を言ってもやるしかないという気持ちになってきた。最終的には、それしか残らないですよね。だから最後はファンの前で、結果云々よりも僕らが笑顔で、悔いが残らず、楽しんでプレーする姿を見せたいという気持ちになってきた。結局、自分たちの人生ですから、1人ひとりが悔いを残さず戦うことが大切だと僕は考えていますから」

 関西弁で、思ったことをストレートにぶつけてくるのが高島副将の良さだ。15人もの選手がピッチに立てば、チームがなくなってしまうという現実をどう受け止めるかも“15様”だ。失望や不安、悔恨もあれば開き直った選手もいただろう。そんなそれぞれの選手が、敗れはしたが、チーム最終戦でどんなに跳ね返されてもトライを目指してボールを動かし続けるファイトができたのは、副将の強気のリーダーシップも影響していたはずだ。

「勝つのが一番いいですけれど、サニックスらしさの記憶を残して終わりたいという気持ちは強いですね。個人的には“らしさ”が、一番大事だと思っています。僕たちは、結局のところは自分のためにラグビーをやっている。なのに、どこかでチームのため、会社のためという順位づけをしたりしている。でも、ラグビー人生が終わる時に一番大事なことは、自分が、自分たちがどんなラグビーをしたいかだと思うんですよ。

 だから、今の僕たちの境遇は恵まれていないかもしれないけれど、いいチャンスやとも思います。5月8日で終わりやという環境ですね。選手によっては、引退試合なんてなく現役を終わることもある。でも僕らは、この試合が最後だという中で試合ができるんです。だからこそ、悔いが残らへん試合をすることが一番大事やと思うんです」

 勝てなくて満足する選手は誰もいない。ブルースフィフティーンもそれは同じだろう。だが、血気盛んな主将代行が語った思いが、1人だけのものでなかったことは、8日の瑞穂に居合わせた誰もが感じ取ったはずだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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