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休部の宗像サニックス、なぜライバルからも愛された? 選手の姿に見えた敬意の理由

1年限定でのプレーのはずがチームの終焉を指揮官として見届けた松園正隆監督【写真:吉田宏】
1年限定でのプレーのはずがチームの終焉を指揮官として見届けた松園正隆監督【写真:吉田宏】

選手には「1試合でも多く試合が必要だった」

 練習を終えた宗像・玄海グラウンドの人気のないスタンドで、松園監督に話を聞いたのは4月28日のことだった。ホームでの最終戦となった清水建設江東ブルーシャークス戦前の週に、チームに無理をお願いして実現した取材だった。

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 東京や博多よりも穏やかに時間が流れる町の、WTB(ウィング)カーン・ヘスケスもお気に入りの海と緑の木々とラグビーが交じり合う“天国”を、まだチームが活動している間にもう一度、目に焼きつけておきたいという思惑もあった。同時に、ニューノーマルの時代は当たり前となったリモート取材だが、この消えゆくチームのメンバーたちの思いを、彼らの息遣いや眼差しも含めて、直接聞きたいという欲望が抑えきれなかったからだ。

 チームが順位決定戦まで試合を行うことは、リーグ側とチームが協議して、ディビジョン3参入チームの了承を受けて決められた。考え方次第では、来季がないチームには順位決定戦ですら不要だという解釈も成り立つ。だが、松園監督がリーグ側へ求めたのは、叶えられるのなら入替戦までも出場したいという希望だった。

「周りからすれば『なんで?』というのもあったでしょう。来季がないなら、そこまでやる必要あるのかと。でも、自分たちとしては、最大限できる環境のなかでやるということだけにフォーカスしていた。自分たちはラグビーをして、勝ち負けの結果を出して、どういう試合ができたかだけが存在意義だと思ったからです。自分たちがコントロールできないところは、決めるべき人たちが決めればいいが、1試合でも、このメンバーでできる試合があるならやりたいという気持ちがありました。

 試合に選ばれない選手もたくさんいます。これからもラグビーをやりたい選手は9割いる。彼らが、他のチームの関係者に自分の能力を見てもらうためには、1試合でも多く試合が必要だったからです。彼らにチャンスをあげなければいけないという思いが、私の中にはありました」

 3月に行われた会社側の休部に関する会見では、チーム自体の譲渡も含めて、選手の「これから」をサポートしていくと説明された。プロ契約選手が多いチームだが、希望者には社員契約に切り替えた上で社業に従事してもらう選択肢も用意している。だが、松園監督が語っているように、現役を希望する選手がほとんどだ。チーム譲渡については、具体的に手を上げる企業はないのが現状だ。公式戦は終わったが、選手の受け入れ先を探すという、もう一つの、しかも厳しい戦いは今も続いている。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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