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今季のラグビー日本代表戦中止 “失われた1年”が2023年W杯にどう影響するのか

チームの熟成に時間がかかる日本代表にとって“失われた1年”の大きさ

 もちろん日本のチームでも、代表側の過度な拘束には不安や不満はある。だが、日本代表クラスの選手にプロが多いとしても、チームはその選手が代表に召集されたことで、深刻な減収に見舞われることはない。そしてラグビーチームを持つ企業側も、所属選手が代表に選ばれることには前向きだ。サッカーのJリーグとは異なり、ラグビーではチームの呼称に企業名が使える。そのため選手が代表に選ばれれば、所属先として企業名をアピールできるのだ。同時にチーム企業の特徴を見てみると「他のチーム企業が同意するなら、我々も賛成」という横並び主義が今も根強く残っている。つまり他のチームが選手を代表に出すのなら、自分たちも供給するという傾向が強いのだ。

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 日本協会では、代表チームおよび企業との話し合いを踏まえて、代表召集された選手とは出向契約を結んでいる。代表活動期間はチームに専念できる環境を整備してきた。多くの強豪国では、所属クラブの活動に加えて、プロ選手会が求める選手の休養期間を設けるなどのウェルフェアを踏まえると、代表活動はさらに期間を限定されることになる。各国で差はあるが、W杯直前の代表強化期間は、せいぜい1か月前後だろう。しかし日本では、エディー・ジョーンズHCのもとで挑んだ2015年W杯前のシーズンは通算200日以上の代表合宿が行われ、ジョセフHCが率いた19年大会前も240日を超える強化を実現している。

 日本代表のラグビーは、他国以上に精密な組織プレーを構築して、パワーや経験値で上回る相手に伍していくのが特徴だ。チームの熟成に時間がかかるため、今回の代表戦見送りは他国以上に深刻な問題になる。しかし、他国にないような豊富な代表拘束時間をフル稼働させることが出来れば、今年の“失われた1年”を挽回できる可能性は残されているだろう。

 来年から代表活動が再開されることを前提とした議論にはなるが、残された3年という強化時間の中で、若手を育成して選手層に厚みを持たせ、メンバー全員に前回W杯を上回るフィジカル面の強化を図り、昨秋に世界を魅了した精巧な戦術をさらに進化させることが、新生ジャパンの挑戦になるだろう。そのためには、従来以上の人数の選手を集めた強化が必要かも知れない。場合によっては、代表チームとは別のスコッドを編成して強化を図る必要があるかも知れない。いずれにせよ、昨秋のW杯を沸かせた桜の戦士たちに新しい力が加わらない限り、3年後の日本代表の成功は容易ではない。

 昨秋のW杯日本大会へ向けては、NDS(ナショナル・ディベロップメント・スコッド)という選手育成機関やサンウルブズに代表選手を送り込むなど、日本代表とは別ルートの強化も併用して、単独チームでは出来なかった強化時間、幅広い選手を鍛える環境を捻出してきた。今回も、前回とは異なる時間との闘いが始まろうとしている。一度はコロナに奪われた時間を取り戻す闘いだ。

 フランスが舞台になる次回W杯まで3年を切った。残された時間の中で、交渉力と調整力、そしてアイデアを駆使して、日本ラグビーが“失われた1年”を取り戻すことが出来れば、ベスト4という夢が目の前のターゲットに変わるはずだ。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19年と6大会連続で取材。

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