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松島幸太朗は世界最高峰の「TOP14」で成功できるのか 求められる心身の「タフさ」

華やかな「シャンパンラグビー」とは真逆の、闘争心むき出しのフィジカルバトル

 フランス代表を象徴するスタイルとして「シャンパンラグビー」という言葉がある。フランス特産の発泡酒を想像させる、湧き上がる泡のように選手がボールをサポートして、アタックを展開する奔放なスタイルから名付けられた。ワールドカップでは過去3度の準優勝が最高成績ながら、6か国対抗では通算25度の優勝を誇り、1980年代にはFBセルジュ・ブランコ、CTBフィリップ・セラら世界最高峰の黄金BKが華麗な攻撃を演出した。

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 しかし、上質なシャンパンが楽しめるのは代表戦という華やかな舞台に限定されると考えた方がいいだろう。フランス国内で日々行われているラグビーは、代表チームとはかけ離れた、FWが泥臭く体を当て前進を図り、闘争心むき出しのフィジカルバトルが繰り広げられる。そこに、自由さを尊ぶフランス人らしい、セオリーにこだわらない奔放なアタックが加味されているのがフランス国内のラグビーだ。

 フランスで伝統的にラグビーが盛んなのは南部で、北部はサッカーが中心だ。現在TOP14を構成するチームも、パリを拠点とする前述のラシン92、スタッド・フランセらを除くとその大半が南部のクラブだ。地域的には農業・牧畜業などの一次産業が中心で、以前はクラブのメンバーも多くは農業従事者だった。

 農作業で造られた厳つい体格に、荒っぽいプレーがフランス・ローカルのラグビーでは主流になっていた。2006年に行われた日本代表のフランス遠征に帯同したときに、そのようなローカルのラグビーを目にすることが出来た。フランス南部のダクスを拠点に行われた合宿の練習試合や実戦形式の合同練習では、地元クラブが“シャンパン”どころかスクラムで強烈にプレッシャーをかけながら激しいコンタクト戦挑んでくるスタイルで日本代表を苦しめていた。

 その伝統は、TOP14が世界的な選手が集まるリーグに進化しても継承されている。昨季、スタッド・トゥールーザンで期間限定でプレーした元日本代表HO日野剛志(ヤマハ発動機ジュビロ)は、実戦の印象を「2メートルの大男達が1つ1つのセットプレー、コンタクト、ブレークダウンでの局面でもの凄い強度でプレッシャーをかけてくる。さらに、しつこく反則気味のプレーも勝つために躊躇なくやってくる」と、その荒々しさを振り返っている。

 1999年にアビロン・バイヨネーと契約して、現地でも“ワタ”とサポーターから愛された元日本代表SH村田亙(専修大監督)から聞いた話だが、試合前日にチームメンバーが散歩する時に、もし対戦相手と出くわせば一触即発の状態になり兼ねないため、スタッフが相手チームとばったりと出会わないようにルートに気を使っていたという。

 現在のフランス国内リーグの成功の大きな要因は、豊富な資本力による部分が大きい。2016年シーズンには五郎丸歩(ヤマハ発動機ジュビロ)を獲得したRCトゥーロンのオーナーは“コミック王”と呼ばれる実業家のムラド・ブジェラル。ビジネスで儲けた資金を、惜しげもなくチーム強化に注いて、五郎丸以外にも元イングランド代表SOジョニー・ウィルキンソン、元オーストラリア代表で昨季までサントリーでプレーしたSO/CTBマット・ギタウら世界的なスター選手でメンバーを固めてきた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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