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松島幸太朗は世界最高峰の「TOP14」で成功できるのか 求められる心身の「タフさ」

世界有数の企業がバックアップ、タレントの豪華さは世界屈指

 フランス選手権初代王者のラシン92も、不動産で財を成したジャッキー・ロレンゼッティがオーナーに就任した2006年以降に、SOダン・カーターら世界的なレジェンドを獲得して強化に成功している。日本のトップリーグも今季から来季にかけてW杯で活躍したスター選手が流れ込んできているが、TOP14が抱える選手のゴージャスさには及ばない。

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 大会スポンサーも、世界的な金融機関のソシエテジェネラル、フランスの通信大手オランジュ、英国のランドローバーら名だたる企業が並んでいる。

 このような豊富な資本と“血生臭さ”を孕んだリーグで、もし松島が期待通りにスピードを武器に活躍できれば、コンタクトエリアで厳しい重圧を受けるのは間違いない。いい選手なら、相手は必ず潰しにくる。土着のフランス流のフィジカルバトルで洗礼を受けることが、一流選手の“お墨付き”のようなものなのだ。

 民族的にはアングロサクソン系の選手より小柄な選手も多いフランスだが、熱く、激しく、泥臭いプレーは、世界のトップクラスのリーグの中でも際立っている。この肉体的なダメージを乗り越え、心理的な恐怖を乗り越えた時に、初めてフランスでトップ選手として認められるはずだ。

 フィジカル面での強さもW杯で証明してきた松島だが、その一方で、怪我に対する慎重さも特徴だ。神奈川・桐蔭学園高卒業後に南アフリカにラグビー留学。スーパーラグビーに参戦するシャークスのアカデミー部門では、昨秋のW杯で優勝した南アフリカ代表の指令塔、SOハンドレ・ポラードらと競い合うなど、若い頃からプロ意識の高い環境で育った松島には、自分自身でコンディションをしっかりと管理することの意識が高いからだ。

 この慎重さが、チームの持つカルチャー次第でプラスにもマイナスにも転じるのが、激しいコンタクトを伴うチームスポーツの難しい部分だ。合理的な解釈を重視するチームなら適切と理解されることが、感情論や精神論ベースでは「弱気」とレッテルを貼られる恐れもある。泥臭いとはいえ、いまやニュージーランド、南アフリカ、欧州諸国などから多くのトップ選手が集まるフランスでは、世界基準の選手のコンディショニング管理や医療体制も導入されている時代だ。激しく体をぶつけ合う肉弾戦を求められているポジションではない松島が、評価を落とすことはないだろうと思いたいところだ。

 持ち味であるスピード、相手を抜くスキルに関しては、かの地でも十分に能力を発揮できるだろう。ベストポジションは、本人が常に希望しているFBか、それとも昨秋のW杯で躍動したWTBか。持ち前のライン際での加速力と、慣れない、激しいリーグを想定すれば、防御の負担が減るWTBがベストチョイスになるかも知れない。このリーグを代表するようなBKスリー(WTB、FBの総称)に成り上がるには、コンタクトエリアでも厳しいコンテストをみせ、なおかつ9か月に渡り続く過酷なカレンダーの中でも、しっかりとピッチに立ち続けることができるタフさを見せることが必要だろう。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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