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福岡堅樹の離脱を嘆く時間はない 東京五輪まで1年、セブンズ代表が抱える課題とは

求められるのはタフさ、選手層がカギに

 会見で触れたもう一人の選手、福岡と同じパナソニックの藤田慶和も非凡なアタック能力を発散させる。東福岡高3年で7人制日本代表入り、15人制でも2012年5月のUAE(アラブ首長国連邦)戦で18歳7カ月27日の最年少キャップ記録を樹立。そのデビュー戦で6トライの荒稼ぎを披露するなど、ダイナミックなランと大舞台での無類の強さを見せる。

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 現在7人制からは離れているが、ワールドカップ戦士でリオ・メンバーでもあるレメキ・ロマノラヴァ(宗像サニックス)も東京五輪に意欲を見せている。7人制ではSO、CTBも兼ねるマルチポジションで活躍するレメキだが、体幹の強さも生かしたランと決定力は7人制、15人制で証明済だ。

 このようなタレントたちの存在を考えると、来年の五輪へ向けたチームの課題は“ポスト福岡”よりも、いかに松井、藤田らをカバーする選手層の厚みを作るかだろう。

 7人でプレーするこの競技は、一見、少人数で賄えるイメージがある。しかし、五輪でもその他の国際大会でも、1日に2、3試合を2日、3日間に渡りプレーするのが当たり前だ。「7分ハーフの試合を1日2試合」――では実感がわかないかも知れないが、15人制と同じ100メートル×70メートルのピッチをわずか7人で、15人制をはるかに上回るスピードと運動量の中で世界トップクラスのフィジカルコンタクトを繰り返すことによる消耗は計り知れない。

 1試合を終え、選手の疲労を回復させて次の試合へ向けて戦術的、肉体的に備えることを繰り返すコンディショニングの難しさは15人制にはないものだ。選手が万全の状態で連戦を勝ち抜くには、どのような控え選手を用意して、ピッチに立つ7人を効果的にローテーションさせていくかという戦略も重要な要素になる。

 では、東京五輪へ向けて、日本はどのような立ち位置にいるのだろうか。

 新型コロナウィルスの影響で、世界の7人制シーンも休止状態に陥っている。世界のトップチームが参戦して世界を転戦する「ワールドラグビー・セブンズシリーズ」は、男子大会が2019年12月にUAE・ドバイで開幕。3月第1週のカナダ・バンクーバー大会まで6大会が行われ、中断となった。日本は前年の成績で大会出場権があるコアチームから陥落しているため招待チームとして5大会に参加したが、通算成績は1勝3分け17敗。総合ポイントでは、参画17チーム中16位という成績だった。

 過去数シーズンの7人制をみると、チームとして活動時間が長ければ成績もアップする傾向はある。7人という限られたメンバーがいかに有機的に機能するかという戦術、コンビネーションや、コンビとも呼ばれないほどの阿吽の呼吸が15人制以上に重要だからだ。プロ化が進む世界のトップチームに比べて日本は恒常的に強化を継続できない状態だが、母国開催の五輪が近づく中で強化時間は年々増加している。しかし、現在の7人制日本代表首脳陣が、リオ五輪でチームを4位という快挙に導いた瀬川智昭ヘッドコーチ(HC、現摂南大監督)を「4位は達成できても、メダルを獲るには現状以上の指導力のある人材が必要」と解任したことを考えれば、“五輪イヤー”だった今季の成績では強化が順調に進んでいるとはいえないのは明らかだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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