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サンウルブズは存続させるべし ベテラン記者が模索する生き残るための“裏技”とは

サンウルブズが生き残る可能性は?

 参入するリーグから除外されれば、当然チームの存続が問われることになる。しかし、先に挙げた強化とファン層を考えれば、たとえ“悪あがき”でも存続の道を探るべきなのは当たり前のことだ。しかも、ベスト4以上を目標にかかげる3年後の次回W杯を考えれば、さらなる高次元での選手強化が欠かせないのは明らかだ。昨秋のW杯で日本代表が世界のトップ8入りを果たしたことで、23年へ向けては2019年までの4年間以上に強豪国との試合が組める期待感は高いが、SRでは南半球の強豪4か国の代表クラスの相手と最低でも15試合を保証されてきた。これに匹敵するか上回るような強化環境を整えられないままSRの舞台から降りることの損失はあまりにも深刻だ。

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 では、今後のサンウルブズには、どのような可能性が残されているのだろうか。SR復帰を除外すると、現状で想定できるのは下記の5つの選択肢だろう。

1.SR以外の海外リーグ参入
2.国内リーグ参入
3.単独チームとして活動
4.国際レベルの新リーグの設立・参入
5.消滅

 渡瀬CEOのコメント通り、1については現時点での可能性は極めて低い。2についても、今月2日の会見までにJSRAは2021年の開幕をめざす国内新リーグ参画の条件である参入の意思表明をしていない。

 日本協会に確認すると、サンウルブズの今季活動の終了が発表された1日の時点で、海外リーグ参入については「柔軟性を持って関係者と議論し、今後に関する最良の選択を検討していく流れになる」と、今後の各国リーグ再開へ向けた規約変更なども注視していく姿勢はみせた。だが、現状でSR以外の大会参加については「JSRAから具体的な可能性は聞いていたことはなく、日本協会として現時点でそういった可能性は模索していない」と回答している。つまり、状況に応じて柔軟な対応は考えていくものの、海外リーグ参戦のための働きかけはしていないのだ。

 国内リーグ、つまり新リーグ参入についても「参入の可能性は現時点では聞いていない」と断言。「今後について、様々な可能性を否定することは現段階では差し控える」と、わずかながら参入の余地だけを残した説明をしている。

 JSRAも日本協会も、サンウルブズに関しては新しい舞台を準備できていないのが実情だ。確かにチームの主管団体の移行時には、このような宙ぶらりんの状況はあることだが、サンウルブズが参画リーグを失い、世界中のリーグが休止状態に陥り、新しいフォーマットを模索している今だからこそ、早急に対策を練る必要があるのではないだろうか。多くの選手、関係者が存続の価値を認めているチームが“心肺停止”状態になっているのだから、手を打たなければならないのは当然のことだ。

 ただし、協会もサンウルブズに対して全く無策というわけではない。実現はできなかったが、オーストラリアでのリーグ参戦については、詳細は差し控えるとしながらも「出来うる働きかけは行った」と説明している。

 3の単独チームとしての活動については、ウェブ会見で渡瀬CEOに「バーバリアンズ」のような形態での存続の可能性について聞いてみた。

 イングランドに拠点を置くバーバリアンズは、世界でも類を見ない特殊なチームだ。1890年創設という歴史を誇るこのクラブは、特定のグラウンド、選手を保有せず、組まれた試合に応じてメンバーが集められる。世界各国の代表クラスの選手を中心に編成され、協会の創立100周年や代表のメモリアルマッチ、チャリティーマッチなどを不定期的に続けている、いわばラグビー版ドリームチームだ。

 単独チームとしての活動は、列挙した1から4の中では最も実現する可能性が高い形態ではある。しかし同CEOが「(チーム存続の形態は)バーバリアンズ的な存在かも知れない。一方で、日本代表を強化するということはあるので、しっかりとここは話し合わっていかないといけない」と指摘するように、代表強化というサンウルブズの最大のミッションを考えると“ドリームチーム”がどこまで役立つかは疑問を持たざるを得ない。

 そして4の新たな国際リーグの設立だが、現状だけで判断すれば荒唐無稽なプランではある。この絵空事を現実にするために欠かせないのは、大会運営資金の調達とSRの大幅なフォーマット変更だろう。国境を跨ぐリーグを立ち上げるには巨額の費用が必要なのは明らかだ。

 来年の国内新リーグ設立への準備と、このコロナ禍の中で減収が必至の日本協会が資金を準備することは容易ではない。6月10日に行われた日本協会理事会後のブリーフィングでも、今季の収益見通しで20億円の減収が生じている説明があったばかりだ。しかし、サンウルブズを本当に残すべき価値のあるチームだと認めるのなら、挑戦するべき価値はあるはずだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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