アマチュアボクシング・岡澤セオン＆原田周大インタビュー第3回

　アマチュアボクシングの2021年世界選手権男子ウェルター級（67キロ以下）金メダルの岡澤セオン（INSPA）が、「THE ANSWER」のインタビューに応じた。アマアスリートながら、自らかき集めたスポンサー収入で活動する27歳。アマ初の「プロのアマチュアボクサー」として2021年東京五輪にも出場した。

　今年10月のアジア大会ライトミドル級（71キロ以下）を制し、ボクシングでは来年パリ五輪代表第1号に。同じく代表内定した男子フェザー級・原田周大（専大）を含め全6回でお送りする。第3回は黒人の父を持つ岡澤の境遇について。海外にルーツを持つアスリートが差別被害を発信することも少なくない。明るい性格で人気者気質の岡澤は「黒人」のワードをネガティブに捉えたことがなく、何も悩まなかった。自身の生い立ちを振り返り、悩む子どもたちへ「良いことも絶対あるでしょ！」と投げかける。（聞き手＝THE ANSWER編集部・浜田 洋平）

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――父親がガーナ出身。同じような境遇で幼少期に苦労する選手が話題になることがありますが、岡澤選手はどうだったのでしょうか。

「あまりないですね。太っている人、目が小さい人、背が低い人が何か言われているのと何ら大差のないような気がします。黒いから黒いと言われていましたけど、僕はそれぐらいの感覚で捉えていました。

　いじられてるとか、すれ違う子たちが『うわ、外人だ』と反応するのは感じていました。でも、かと言って自分が言わないかと言ったら、自分もそういうことを言う子どもでした。当時の僕も、その子たちが本当に僕をいじめてやろうと思って言っていないとわかっていましたし、子どもながらなんとなく『別にそんな気にするようなことじゃねぇな』と思っていたので、何ともなかったですね。

（この話題について）あまり考えたことがなさすぎて（笑）。僕はハーフで良かったことの方が多いですよ。目立つし、いじってもらえるし、仲良くなれるし」

――どんな子だったのでしょう？

「あまりヤンチャではないですよ。でも、イタズラとか好きで（笑）。お調子者みたいなヤツでした。みんなには友だちが多いと言われますね」

――黒人を親に持つ著名人がSNSで悩みや考えを発信することがあります。そういうニュースを目にした時、何か感じることはありますか。

「どうなんだろう……僕はあまり自分がハーフだと思って生きていないんです。歩いていて、自分で自分を見る機会ってあまりないじゃないですか。昔、鏡の前で髪を洗っていて、顔を上げたら思ったより自分が黒人で（笑）。『おおおお。俺、こんな外人なんだ！』みたいな（笑）。だから、僕も一人の日本人としてそういうニュースを見ているので、そんなに拒否反応を示すわけでもないです。

　テレビとかでも、容姿の悪口を言ってはいけないようになってきていますよね。それと同じぐらいの感覚で見ています。僕はどちらかと言えば、黒人と言われるのは“おいしい”と思って生きてきたし、それが僕の一番のアイデンティティーかなと。

（自分の顔を指さしながら）これを見てですよ。『日本人だね！』って言う方が違うじゃないですか（笑）。その方がおかしくないですか？　これでやってきたのに、触れちゃいけないという方が僕はなんだか変だなって。すっごい違和感があります。なんで黒人って言われたら嫌なんだろうって思うんですよ。

『黒人だから〇〇だ』と言われるのは嫌ですが、何かあって『黒人じゃん！』って言われても、実際に黒人だから別に何も言いようがないですよね。『日本人じゃん！』と言われて嫌な思いをしてるいのは、自分がそれにコンプレックスを感じているからであって、別に『日本人じゃん』と言われて嫌じゃないですよね。

『日本人ですね』『はい』で終わり。僕からしたら黒人と言われることも別に嫌なことではない。あまりこういうことを言ってはいけないのかもしれないですが、気にしすぎなのではないかと思います。例えば何を言われているんですか？　僕は（SNSなどを）流して見ているので」