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鉄拳制裁におびえて25歳で引退…元バレー代表・益子直美「怒らない指導」で続ける日本スポーツ界改革

医師から言われた「監督を速やかに辞めなさい」

「渡り切ることができず、海ほたるで休んで引き返したこともありました。医師には『監督が一番のストレスなんだから、速やかに辞めなさい』と言われました」

 監督を退任後、益子氏はスポーツメンタルコーチング、アンガーマネジメントを学んだ。そして、「監督が怒ってはいけない大会」の活動を本格化させ、21年に法人化した。

「アンガーマネジメントを学んだことで、感情を否定するのではなく、どう受け止め、どう伝えるかをより深く考えられるようになりました。『怒る指導』は心の成長を阻止し、考える機会を奪います。小学生がスポーツを始める大事な時期に『根性がない』と脱落させる指導ではなく、スポーツは楽しいと思え、自ら考え行動できる環境にしてほしい。その考えで『監督が怒ってはいけない大会』を続けてきました。そして、今は『怒らないことが当たり前』で、それを進化させた『つながるリーグ』を展開しています」

 益子氏が本部長の日本スポーツ少年団は、ドイツスポーツユーゲント(青少年育成組織)をモデルに結成され、ドイツとの間で約100人の青少年を派遣・受入している。益子氏は、そこで勝利至上主義ではなく、「人材育成」の大切さを再確認。「日本スポーツの仕組みを変えたい」との思いを強くした一方で、「早く私が必要ない状況になってほしい」と願っている。

「今の日本代表選手を見ると、『いい指導者と出会ってきたな』と感じます。海外移籍で新たな指導法にも触れていて、この先にも夢があります。『スポーツで学校を有名にしたい』と考える年齢の高い学長、理事長の中にはかつての手法を望む人たちもいますが、代替わりで状況が一変したケースもあります。ビジネス界に続き、スポーツ界にも『ハラスメントはいけない』という考えが浸透してきた現実もあります」

 益子氏にとって、喜ばしいことも起きている。「監督が怒ってはいけない大会」の初期から参加を続ける男子小学生バレーボールチーム・幸袋ジュニア(福岡・飯塚市)が、24年夏の全国大会に初出場し、初優勝した。

「これで、声を大にして『怒らなくても勝てる』と言えるようになりました」

 引退を目標にコートに立ち、「トスが上がってくるな」と祈っていたかつてのエース。その後も経験した失敗と後悔は今、日本スポーツ界改革の原動力となっている。

■益子直美(ますこ・なおみ)

 1966年5月20日、東京・葛飾区生まれ。中学時代からバレーボールを始め、共栄学園高3年の秋に日本代表入り。その後、日本リーグのイトーヨーカドーでプレー。90年にはリーグ初優勝。92年3月に現役引退。退職後は、スポーツキャスター、タレントとして活動。NHK総合「トップランナー」の司会も務めた。175センチ。血液型A。

<日本アンガーマネジメント協会 実践パートナー募集>

 日本アンガーマネジメント協会は、今年5月11日に「感情を扱える社会宣言」を発表し、今月15日まで「実践パートナー」の募集をしている。主な対象は、ハラスメント防止、管理職・教職員・指導者の伝え方、組織内コミュニケーション、部活動や外部指導者・外部講師との関わり方などに課題を持つ企業・学校・スポーツ団体で、選考を経て3団体が決定される。

 参加団体は、組織内代表者1人がアンガーマネジメントファシリテーター(怒りの感情と上手に付き合うプロ)養成講座へ無償招待され、資格取得後の自組織内での「アンガーマネジメントの講座」開催のサポートなどを受けられる。同協会のスポーツ領域アンバサダーに就任した益子氏は、同資格を取得しており、「実践パートナーの皆さまが、講座受講や資格取得を通じて学びを深め、それぞれの現場で実践につなげていくことで、スポーツの現場にもより良い変化が広がっていくことを期待しています」と話している。(詳細は同協会公式サイト)

(THE ANSWER編集部・柳田 通斉 / Michinari Yanagida)

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