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日本代表監督トルシエが求めた“サッカー型人間” ビジネスでも大切な認知、判断、実行のスキル

日本のビジネスの世界にも「とうとうサッカーの時代が来た」

 かつて日韓ワールドカップで日本代表を指揮したフィリップ・トルシエの言葉が、サッカーの本質を表しているという。

「赤信号では止まる。それをただ守るのが日本人。でもフランス人は、自分の目で確かめ危険ではないと判断したら渡る。サッカーも同じです。ルールには違反していても、本当に危ないと思ったら、自己責任でファウルをしても止める。『やってもいいか?』なんて、監督の顔色を見たり聞いたりしている暇はないんです」

 しかし時代は変わった。今までの日本社会では、上司に異論を挟まず黙々と仕事に打ち込む野球型のイエスマンが求められた。

「でもビジネスの世界が先に変わり始めた。ずっと求められてきたイエスマンが、今度は要らないと言われるようになった。これはコペルニクス的な大転換です。とうとうサッカーの時代が来た、僕のような人間を作り出すことが、サッカーの価値を高める。そう思いましたよ」

 いよいよ企業も上意下達ではなく、自ら人生を切り拓いていくアグレッシブな人材を探し求めるようになった。

「自分で考えて行動する。つまり認知、判断、実行で成り立つのがサッカーです。プロになるのは2万人に1人、99.9%は社会に出ていくわけですが、これからは組織の大切さを理解しながら個人でチャレンジもできる“サッカー型人間”こそが重用されていくはずです。黙って上司に従うのではなく、会社が危機的状況にあるならしっかりとそれを指摘して『これをやるべきだから、俺をプロジェクトリーダーにしてください』と主張できる人材がいれば、組織も頼もしいと評価するでしょう」

 ベンチの指示を待たずに動ける人間は、今、サッカーのピッチ以上に社会で価値を持ち始めている。(文中敬称略)

[プロフィール]
幸野健一(こうの・けんいち)

1961年9月25日生まれ。7歳よりサッカーを始め、17歳の時にイングランドへ渡りプレーした。現在は育成を中心にサッカーに関わる課題解決をはかる「サッカー・コンサルタント」として活動。2014年に「アーセナルサッカースクール市川」を開校させ、代表に就任。19年に「FC市川GUNNERS」にチーム名変更、20年3月から業務提携した市川SCのGMに就任した。息子の志有人はJFAアカデミー福島1期生のプロサッカー選手で、09年U-17W杯に出場した。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)

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加部 究

1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近、選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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