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勝利至上主義の高校ラグビーに一石 監督の指示「禁止」、KCリーグ創設の狙いとは

高校のラグビー部を母体に、他校の生徒も加入できるクラブへと進化を遂げたチームが神奈川県にある。平塚工科高校ラグビー部は昨夏、「湘南アルタイルズ」として始動したことを宣言。「部活」の枠を超えた高校ラグビーチームは、なぜ誕生したのか。後編では、クラブ化とともに立ち上げた「KCリーグ」に注目。ユニークなルールが設けられた独自のリーグの狙いや、今後の可能性に迫った。(取材・文=吉田 宏)

制約のないKCリーグで選手たちは心の底からラグビーを楽しんでいる【写真提供:松山吾朗】
制約のないKCリーグで選手たちは心の底からラグビーを楽しんでいる【写真提供:松山吾朗】

湘南アルタイルズ後編、松山吾朗氏の思いを形にしたKCリーグがスタート

 高校のラグビー部を母体に、他校の生徒も加入できるクラブへと進化を遂げたチームが神奈川県にある。平塚工科高校ラグビー部は昨夏、「湘南アルタイルズ」として始動したことを宣言。「部活」の枠を超えた高校ラグビーチームは、なぜ誕生したのか。後編では、クラブ化とともに立ち上げた「KCリーグ」に注目。ユニークなルールが設けられた独自のリーグの狙いや、今後の可能性に迫った。(取材・文=吉田 宏)

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 平塚工科高校の校長から助言を受け、同高教諭でラグビー部監督の松山吾朗氏(ゴロー先生)は昨年6月、クラブチーム「湘南アルタイルズ」の活動をスタートさせた。

「外部メンバーに関しては、必要なのは保険だけでした。ラグビー協会に登録する時に必要な協会見舞金制度と高体連の見舞金制度。そこに、スポーツ保険と重症障害保険と2つに入ってもらえば、かかるお金は他に何もなかった。道具は学校にありますし、グラウンドもある。そもそも大会もないので大会登録料も必要ない」

 そして、クラブチームである湘南アルタイルズが試合をするために、「KCリーグ」というリーグも同時に立ち上げ、昨夏からすでに試合が始まっている。

 KCリーグは神奈川のKとCamarade(同士)の頭文字から取った名称だが、リーグ立ち上げの趣意、目的には、こう記されている(一部抜粋)。

・1試合の中で、全部員が最低1ハーフ以上出場することを義務とする
・アフターマッチファンクションをどんな形式であれ必ず行う
・勝ち点制やボーナスポイントは作らず、最終順位もつけない
・高体連の公式戦出場時間が短い部員を優先して長い時間出場させることを推奨
・試合時間は相手と話し合って決める。10人制、12人制などでもよい。相手からメンバーを借りるのも可
・指導者は試合中の選手に対して「指示」や「非難」を厳に慎む

 加えて、試合中のメンバー入れ替えも自由だという。この自前リーグは、いわゆる公式戦ではなく、高体連やラグビー協会の管轄外の活動と位置づけられる。つまり、外部からなんの束縛もなく、有志で集まったチームが自由にゲームができる。

 この利点を生かして、ルールも自由度満載だ。いわゆる部活、体育会的な考え方や価値観から離れて、選手たちに制約なく自由にラグビーを楽しませたいという思いが込められている。何よりもユニークなのは、「花園」を頂点とするラグビーがなかなか実現できない、より多くの試合を、一部の選ばれた選手だけではなく、より多くの選手に経験させたいという強い思いだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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