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女子選手の「メイクと競技」の根深い問題 「美」から支える元バドミントン選手の使命

女性アスリートにメイクする花田さんの活動風景【写真:本人提供】
女性アスリートにメイクする花田さんの活動風景【写真:本人提供】

女性アスリートならではの背景「メイクをすると『モテたいの?』と言われる世界」

 女性アスリートと「美」の問題は、実は根深い。その一つが、選手が驚くほど知識に疎いこと。それが、花田さんの活動の需要につながっているが、自身もかつてはそうだった。

 モデル時代は所属事務所のメイクレッスン、ミス・ユニバース選考で行われるビューティーキャンプに参加した。以降も自主的に関係者と接点を持つように動き、1対1でレクチャーを受ける機会を設定。時間があれば百貨店に足を運び、同じ質問を各メーカーの美容部員にして回った。

 普通の大学生なら、会話にメイクの話題が挙がったり、就活用にレッスンをしたり、自然と意識は高まるもの。ただ、女子選手の世界は特殊だ。「私も最初はこうやるんだという知識すらなく、モデル事務所で私のメイクを見たマネージャーに『アート?』と言われたくらいです」と笑う。

「何を買えば、どこで買えばいいかが分からない。美容雑誌を読む選手なんてごく一部で、逆に浮いてしまう。特に周りが誰もしていない競技、集団だと、メイクをしていると『えっ、何? モテたいの?』『男の目、気にしてるの?』と言われてしまう世界。それが怖くて言えないんです。

 でも、引退したら今までメイクをしていた人と同じ土俵に立ちます。実際に引退した選手に聞くと、その瞬間から今まで努力してつけてきた筋肉が邪魔になり、メイクをしてこなかった過去が恥ずかしくなり、取り残される。アスリートとして生きた人生をそんな風に思ってほしくないです」

 周りの目を意識するあまり、競技だけに打ち込み、蓋をしてしまっていた「キレイになりたい」という気持ちを掘り起こしている感覚があるという。だから、活動で大切にしているのは「当時の自分が何を思い、何に悩んでいたか」。こうして今、現役選手に向き合うことで、彼女たちの変化を感じる。

「コートに自信を持って立てるようになった、メディアで堂々と発言できるようになった、試合の90分前にメイクをするルーティンができたという声を聞きます。試合前に出る不安や焦りが、メイクは集中するので雑念が生まれない、気持ちの切り替えにメイクをするようになった選手もいます」

 目の前の一人一人にメイクを施すことが、かつての自分を救っている。ある時、メイクレッスンを終えて使った道具を整理していると勝手に涙が出てきた。「今まで自分のために揃えてきたものが人のためになっていると感じた時、すごくうれしいと感じたんです」と振り返る。

今後は「スポーツ」と「ビューティー」の接点を作っていきたいという花田さん【写真:松橋晶子】
今後は「スポーツ」と「ビューティー」の接点を作っていきたいという花田さん【写真:松橋晶子】

 では、これから「アスリートビューティーアドバイザー」として、どんなキャリアを築いていきたいのか。 

 今、女性アスリートと外見について取り巻く環境について「彼女たちが世間に求められてしまうのは純潔、純朴といった風潮。幼少期、ジュニアから注目されていた選手たちであればあるほど、変わったなどと好き勝手に言われてしまいます」と花田さん。

 最近、女子ゴルフで「美女ゴルファー」として取り上げられる19歳の安田祐香が自身のインタビューで「キレイな女性になりたい。キレイは自分の意見を持っている人」と語ったコメントが目に留まり、「キレイ」が内面にフォーカスされていることが嬉しかった。

「必ずしも『美しい』は外見だけがキレイな人のことを指すとは思いません。私自身、外見だけにこだわっているモデル時代に摂食障害になったこともあり、心は幸せではありませんでした。『美しい』は心と同じで外見と内面のバランスで成り立つもの。外見をメイクすることで『チャラチャラしている』『人の目を気にしている』ということじゃなく、みんなが『自分のためです』と堂々と言えるようになってほしいです。

 特に女性アスリートの場合は『可愛すぎる』と外見だけが取り上げられる選手もいますが、そればかりじゃなく、憧れの存在になってほしい。美しく、かっこいい選手がいたら子供も憧れるし、スポーツの活性化につながる。高校から大学で競技を辞める選手が多いのは、女性らしくいたいのにできないからと聞きます。でも、競技と女性らしさの両立ができる。『好きなことはどちらも諦めなくていいんだよ』と発信したいです」

 今後については「今はまだ交わっていないスポーツとビューティーの接点を作っていきたい」と夢を膨らませ、自身が関わった選手が来年の東京五輪で笑顔を見せてくれることを願っている。

「もちろん、強制はしません。『みんな、メイクして』とは全く思っていなくて、したくない選手はしなくていい。でも、したい選手は自由に選べる社会にしたい。周りに言われるからじゃなく、自分の自信、魅力を引き出すための手段の一つとして当たり前に選べる風潮になってほしいです。

 私の目標としては『アスリートビューティーアドバイザー』という肩書きを職業として確立させること。その育成もしていきたいし、どこの試合に行ってもいるくらいにしたい。メンタルトレーナーと同じように同行しているような未来になるように、これからも地道に活動していきます」

 唯一無二の道を歩む花田真寿美さんの挑戦は続く。「強さ」と「美しさ」が当たり前のように共存し、スポーツの陽の下で輝く日を目指して。

■花田真寿美

 1987年生まれ、富山県出身。小学3年生からバドミントンを始め、大学2年生まで続ける。29歳だった16年から「アスリートビューティーアドバイザー」として活動を始め、19年に日本アスリートビューティー協会を設立。今年10月からは「チーム・アスリート・ビューティー」を立ち上げ、元競泳日本代表・伊藤華英さんのほか、管理栄養士、パーソナルカラー診断士、皮膚科専門医ら7人で協力し、それぞれのジャンルで“美”を追求したオンラインプログラムを提供している。

(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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