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ラグビー選手・稲垣啓太 「笑う」とか「笑わない」とかじゃない、29歳の思考と本音

稲垣は「笑わない男」というフレーズに何を思っているのか【写真:荒川祐史】
稲垣は「笑わない男」というフレーズに何を思っているのか【写真:荒川祐史】

「笑わない男」で人格が消費されることについて思うこと

――これだけ物事を俯瞰して見ることができる個性がありながら、そういう「稲垣啓太」という人格が「笑わない男」というキャッチーなフレーズで消費されているような印象です。当事者として、その事実をどう受け止めているのでしょうか?

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「うーん、別に僕自身はそんなにストレスも溜まってないんですよね。評価するのはどうやったって周りの方たちですから。自分の中で一本ブレないものを持っていればいいかなとも思っていますし。今、『笑わない男』と言われて、確かに笑顔は少ない方かもしれないですけど、自分が笑わなくても周りの方は笑っているから、楽しんで頂けているのかなと思いますし。そこに対して自分もなんのフラストレーションも溜まってないですから。それはそれで素晴らしいことなんじゃないですかね」

――そんな立ち位置も理解した上で、年末年始は多くのテレビに出て、ファンを楽しませてくれました。休みたいという思いがあっても不思議ではないですが、改めて、あれだけ表舞台に立ち続けた理由を教えて頂けますか?

「ラグビーの認知度をどんどんどんどん上げていかないといけないと思ったのが、まず大きな理由ですよね。全員が全員そういった機会が与えられるわけではないですから。その時はたまたま自分であっただけ。これから選手生命はそこまで長くないでしょうけど……まあ、10年くらいはやりたいですけど、自分が終わった時に自分に替わる選手も新たに出てくるでしょうし、タイミングだと思うんですよね。誰かがその時、必要とされていて、その時はたまたま自分であっただけ。じゃあ、自分がラグビーを発信する機会が与えられたのは、その代表としてしっかり発信しないといけないなと。

 もちろん、嫌々出たわけでもないですし、出演させて頂いたメディア関係の仕事は全部が全部楽しかったです。お互いにWin-Winの良い状態で仕事ができたんじゃないですかね。僕はラグビーを発信することができましたし、プラス、個人の『稲垣啓太』という名前もラグビーファン以外の方にも覚えて頂きましたし。『じゃあ、稲垣啓太がラグビーをしているところを見に行こう』と思ってくれたら、それは本当に素晴らしいことです。自分にとって素晴らしいきっかけを与えて頂いた年末年始だったなと思っています」

――W杯ではプレーヤーとして、ラグビーの面白さを体現していました。でも、これだけ言葉を大切にしている稲垣選手だからこそ、言葉でラグビーの面白さを表現するとしたら、どう表現しますか?

「何点かあるんですけど、一点に絞った方がいいですよね?」

――そうですね。ご自身の中で、一番上に来るものを聞かせてください。

「ラグビーっていうスポーツはコンタクトスポーツであって、やっぱり衝突が避けられないスポーツですよね。そういう激しいスポーツにも花形と言われる選手も存在しますよね、例に挙げれば福岡堅樹とか。ああいうスピードがあって、トライを取る選手というのが花形になってくるでしょうけど。おそらく、トップレベルに行けば行くほど、そのチームの15人中ほとんど全員が主役を張れるような選手なんですよ。ただ、全員が全員、主役を張ろうとしてもチームとしては成り立たないと思っているんです。ラグビーは15人に1人ずつ役割が与えられていて、1人ずつ役割がまた違うんですよ。

『目立つべき選手を、目立たせるために、目立たないプレーをする選手』というのが存在するんです、ラグビーには。それが、僕のような存在です。僕が目立とうとしていたら、おそらくチームは機能していないでしょうし、僕はその与えられたチームの役割という歯車から外れている状態でしょうし。“僕が目立たない時”がチームが一番、機能している時。だから、そういったいろんな役割を与えられた選手が役割を遂行していく中で生まれる花形のプレー。目立つ選手もいれば目立たない選手もいる、ということです。

 それは、どのスポーツにおいても一緒かもしれないですけど、より顕著に出るスポーツがラグビーなんじゃないかなと思っているんです。そういった部分を見てもらえると、より楽しさが伝わるんじゃないですか。『今のトライ、凄かったよね』『でも、その前をちょっと遡って観ると、この細かいプレーがあったから、実はここにスペースができたんだよね』、そういった楽しみ方を見つけたら、より玄人に近づけるんじゃないですかね。でも、そんな玄人プレーよりも一番は最初に話した通り、衝突が避けられないプレーですかね。そういった迫力という部分を楽しんで頂けたらなと思うんです」

――稲垣選手も青春時代にラグビーと出会い、虜になったようにW杯を機にラグビーの面白さを知った子供たちがたくさんいます。そんな子供たちが稲垣選手と同じくらいの年になる頃、ラグビー界がどんな世界になってくれていたら幸せですか?

「子供たちがラグビー選手に対して憧れるような、そんなラグビー文化が根付いてくれたらなと思うんですよね。なぜかというと、小さい頃、野球をやっていたからというのもあるんですけど、野球選手の華やかな世界に憧れていましたし。高級車に乗って『ああ、すげえ』って本当に思ったんです。ラグビー界もそうやって憧れるような存在になれば、ラグビー選手になりたいって思うんじゃないかなって思うんですよ。だから、まずは子供たちに憧れられる存在にならないと、子供たちがラグビー選手になりたい、プロ選手になりたいって思ってくれないでしょうし。そういった文化が根付いてくれたらいいな、と思うんですけどね。もちろん、ラグビーに触れるきっかけを作ることも重要だと思いますけど、ラグビー選手もそういうフェーズに移行する時が来たんじゃないかなって感じてますね」

――その中で稲垣選手はどんな立ち位置で貢献していくのか。今、描いているビジョンがあれば、最後に教えてください。

「今はいろんなメディアにも出させて頂いてますけど、今そういったお話をたくさん頂いている中でできる限り、自分のプレースタイルに支障が出ない程度にですけど、参加させて頂いて、よりラグビーという競技をメディアを通して、いろんな人にお伝えさせて頂けたらなとは思います。やっぱり子供たちがラグビーに触れる機会を作っていきたいなとは考えてますね。ラグビーに触れる機会というのは小さい頃は全くなかったですから。これはボール1つあるないだけでも雲泥の差でしょうし、そういうチャリティー的な部分も考えています。今後、そういった場をもっともっと作っていけたらなと思います」

――今日はお忙しいところ、ありがとうございました。(取材日=1月16日、パナソニックワイルドナイツ練習場で)

【取材後記「このインタビューを敢えて“編集なし”で掲載したワケ」】

 ここまでお読み頂いた内容、実はインタビューの書き起こし、ほぼ、そのままなんです。インタビュー前、「笑わない男」と言われた稲垣のまだ伝わっていない魅力が、どうすればより多くのファンに伝わるのかを考えた。「稲垣啓太という男でしか作れない、インタビュー記事が作りたい」――。その答えが、“編集なしの掲載”という試みだった。

 通常、言葉のキャッチボールを文字に起こして伝える活字系メディアは、どうしても編集が必要になる。選手によっては意見が脱線したり、回答がまとまらなかったりする。その場合は趣旨が変わらない範囲で、前後の発言を組み直すこともあれば、回答そのものを削ってしまうこともある。それほど自分の考えを整理し、発信するという作業は難しい。

 しかし、稲垣にはその必要がないと思った。理由はインタビューでも挙げた通り、物事を論理立てて発言を展開できる珍しい能力が備わっているから。優れた食材は手を加えすぎない方が、素材の良さが伝わるようなもの。敢えて、編集しないことで稲垣の論理的思考を実証する。そう思って取材し、語尾などのディテールを含め、会話をそのまま掲載した。

 結果は見ての通り。どの答えもエピソードから自身の考えまで過不足なく情報をちりばめ、こちらから補足質問の必要がないものばかりだった。

 こちらが持ち上げるような発言をすると、適度な自虐でバランスを取る点も印象的だったが、一つだけ、記事から伝わらないことを挙げるなら、インタビュー中、1.5メートルほどの距離で正対した、こちらの目を見て視線を外すことなく、自分の思いを伝えてきた。こんなところにも「笑わない男」の奥深さを感じ、稲垣啓太の人柄を見た気がした。

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(THE ANSWER編集部・神原 英彰 / Hideaki Kanbara)

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