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過敏性腸症候群に悩む 欧米アスリートが今、実践している「低フォドマップ食」とは

過敏性腸症候群に悩む欧米各国のトップアスリートたちも実践

 低FODMAP食が拡がるきっかけは、2011年、イギリスの研究チームが医学誌に発表した論文。標準食と低FODMAP食を摂取した人を比較すると、後者の方が症状を数値化したスコアの改善度が高かったという結果を発表。被験者の数は少なく、参考程度にしかならないものの、世界中から注目されました。

 現在も臨床研究が十分に実施されていないため、研究を進めながら、効果を検証している段階です。ただ、低FODMAP食を実践したことで、「ガスが発生しなくなった」「腹痛がなくなった」という声はあり、過敏性腸症候群に悩む欧米各国のトップアスリートたちも注目。取り入れている選手も増えてきています。

 また、グルテンフリー食で制限される小麦やライ麦も低FODMAP食に含まれるため、「小麦のグルテンだけが不調の原因ではないのでは?」と低FODMAP食に切り替える人もいるようです。

 消化器系の不調を繰り返すことは、コンディション管理を非常に難しくします。これはアスリートにとって、パフォーマンスの出来を左右する非常に深刻な問題です。しかも、スポーツ選手は体の変調を繊細にキャッチするうえ、食べる量が多いので、食事の影響を受けやすい。ですから、彼らがグルテンフリー食や低FODMAPなど、新しい食事療法にいち早く関心を示すのは理解ができます。

 ただし、低FODMAP食は原因を特定するのに数か月の時間がかかる人もいます。また、制限される食品はもともと健康によいとされる食品多いため、それこそ自己判断で制限をするとかえって体調を崩す可能性もあります。そのため、各国のスポーツ栄養士たちの間でも、アスリートからサポートやアドバイスの要望があった際、医師や医療関係者と連携を図りながら、個々の選手に合った食事法を検討していくことが重要だと考えています。

 食事療法は「特定の食べ物を食べなければいい」という方向に走りがちです。しかし、その時の体調や食べ物の組み合わせによっても、症状の出方は変わります。また、冒頭でも触れた通り、過敏性腸症候群は、心理面が及ぼす影響も大きい。低FODMAPに興味のある方も安易に食事を制限するのではなく、まずは専門医に相談することをおすすめします。

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橋本 玲子

株式会社 Food Connection 代表取締役

管理栄養士/公認スポーツ栄養士

ラグビーワールドカップ(W杯)2019で栄養コンサルティング業務を担当。2003年ラグビーW杯日本代表、サッカーJ1横浜F・マリノス(1999年~2017年)、ラグビーリーグワン・埼玉パナソニックワイルドナイツ(2005年~現在)ほか、車いす陸上選手らトップアスリートのコンディション管理を「食と栄養面」からサポート。また、ジュニア世代と保護者に向けての食育活動も行う。アメリカ栄養士会スポーツ循環器栄養グループ(SCAN)並びに、スポーツ栄養の国際的組織PINESのメンバー。アメリカ栄養士会インターナショナルメンバー日本代表(IAAND)として、海外の栄養士との交流も多い。近著に『スポ食~世界で戦うアスリートを目ざす子どもたちに~』(ベースボールマガジン社)

URL:http://food-connection.jp/

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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