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都内と大船渡でオンライン指導、五輪2大会連続出場の伊藤華英さんが参加

競泳で北京、ロンドンと五輪に2大会連続出場した伊藤華英さんが25日、公益財団法人東日本大震災復興支援財団が立ち上げた「東北『夢』応援プログラム」のオンラインイベントに登場した。各競技のトップランナーが遠隔指導ツールを駆使し、動画を通じて被災地の子供たちを指導するプログラム。今回は3月までの半年間、岩手・大船渡の子供たちを対象に行われ、この日は指導始めとなる「夢宣言イベント」を開催した。

伊藤華英さんが「東北『夢』応援プログラム」のオンラインイベントに登場した【写真:編集部】
伊藤華英さんが「東北『夢』応援プログラム」のオンラインイベントに登場した【写真:編集部】

東京と大船渡を繋ぐ水泳教室 伊藤華英さんが伝えた「泳げなくてもいい」の真意とは

 競泳で北京、ロンドンと五輪に2大会連続出場した伊藤華英さんが25日、公益財団法人東日本大震災復興支援財団が立ち上げた「東北『夢』応援プログラム」のオンラインイベントに登場した。各競技のトップランナーが遠隔指導ツールを駆使し、動画を通じて被災地の子供たちを指導するプログラム。今回は3月までの半年間、岩手・大船渡の子供たちを対象に行われ、この日は指導始めとなる「夢宣言イベント」を開催した。

 今後は参加した子供たちから練習した動画が送られ、それに対し、コーチ役の「夢応援マイスター」伊藤さんがアドバイスを添えて返信。月1回のやりとりを繰り返しながら水泳の技術向上を目指していく。本来は大船渡を訪問する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大により、この日はオンライン方式に変更。それでも、プログラムに参加して5年目となる伊藤さんはスタートから元気よく挨拶した。

「はーい、皆さんこんにちは~! 元気ですか? 映ってますか?」とパソコン画面に登場。東京五輪大会マスコットの「ミライトワ」と「ソメイティ」のぬいぐるみを持って手を振ると、参加した小学1年から6年生までの9人も元気よく返した。

「本当だったら大船渡まで行ってみんなと水泳をして遊べたんですけど、今はこういう状況なので、いろんな人が試行錯誤しながらスポーツのイベントをしようと努力してくれました。いろんな人が協力して考えて、リモートでこのプログラムを開催することができました。みんなも参加してくれてありがとうございます。今日はお水の中じゃないけど、もっと泳ぎたいなと思ったり、いろんなことにチャレンジしていきたいなって気持ちになったりできるように、私も一生懸命指導していきたいと思います」

 画面に映るオリンピアンが「わかった人!」と投げかけると、元気よく手を挙げる子供たち。都内にいる伊藤さんと大船渡にいる小学生。最初は3回勝負のジャンケン大会で盛り上がり、物理的距離に関わらず気持ちはぐっと近づいた。

 続いて伊藤さんを紹介する現役時代の映像を公開。激しく泳ぐ姿を子供たちは見つめた。伊藤さんは「引退をして8年目。スポーツを広めていく仕事をしているので、これが自分の原点かなと思うと、今回参加する皆さんにも水泳を通して一生懸命やることや、自分で決めたことを達成できる喜びを感じてもらえたらなと思います」と期待を込めた。

 自己紹介コーナーで子供たちがそれぞれの「頑張りたいこと」を発表すると、伊藤さんは「一つ一つやれば、いつの間にか上手になっているので頑張りましょう」「半年間頑張って小学4年生のいい思い出にしてね」「一生懸命、自分のベストを毎回尽くしてください。それで泳げなくてもいいですからね。なので一緒に頑張っていきましょう」などと説明。過去のプログラムでは、最初は10メートルしか泳げなかった1年生が速いスピードで25メートルを泳げるようになったことを明かすなど、小学生に寄り添った。

子供たちも画面上の伊藤さんに合わせて一緒に動いた【写真:編集部】
子供たちも画面上の伊藤さんに合わせて一緒に動いた【写真:編集部】

平泳ぎの選手は25mを何ストロークで泳げる? 子供たちが元気に回答

 続いて行われたのはストレッチ。伊藤さんは両腕を上に伸ばして背伸びを促した。「この体操ができないと水をキャッチできないからねー。はい、1、2、3……」。かけ声とともに子供たちは必死にまねをして体を動かした。伊藤さんはプールの壁をキックした際に行う「けのび」の大切さを説明。泳ぎをスムーズにするストレッチを教え、子供たちも屋内で一生懸命に取り組んだ。

 オンラインであることを忘れてしまいそうな熱のこもった時間。クロールの手のかき方の指導では、子供たちも画面上の伊藤さんに合わせて動き、一緒になってフォームを覚えた。「指先が床を向きながら入水ですよ。頑張れ! そう上手! 手をもっと前!」。画面越しに生徒一人ひとりの動きを確認する夢応援マイスターから熱い声が飛んだ。

 バタフライの手のかき方も練習。1ストロークの合間にキックを2回入れるイメージを身振り手振りで伝えた。顔を上げるタイミングも細かく指導。平泳ぎでは、伊藤さんが「平泳ぎの選手が25メートルを泳ぐ時、何ストロークで行けるでしょうか」と質問。「25!」「15!」と声が上がる中、「実はゆっくり泳いだら3かきで行けます」と説明すると、子供たちは「え!?」と目を丸めた。

「どうして3かきで行けるかというと、1かき、1蹴りで15メートル近く行きます。けのびから1かき、1蹴りでぎゅーっとみんな前に伸びていく。クロールの25メートルなら、みんなも最低25かきで行けるようにしてほしいな。1メートル、1かきで行ってほしい。平泳ぎは両手で泳ぐので12回くらいかな。

 ストロークを数えることをしっかりやると、自然と速くなる。1回で進む距離を伸ばすことで、テンポを上げた時に速く泳ぐことができます。速く泳ぎたいという気持ちよりも、少ない数で25メートルを泳げるというふうに考えれば、自然と速く泳げるようになります」

 全ての泳法に通じる意識を伝えた。「わかった人はマル!」と言われると、子供たちは両手で大きく円を作った。「次に動画を見せる時は、1かきを長くやることを意識してやってもらいたいなと思います。できる人は泳ぎながら、かいた回数を数えてみてくださいね」。約30分の指導を終え、次回までの課題が明確となった。

 続けて行われたのが、この日のメインとなる「夢宣言」だ。子供たちが「将来の夢」などを決め、それぞれの目標を「夢達成ノート」に記した。「半年後の約束」では「最初のタイムより速くしたい」「クロールを何メートルでも泳げるようになりたい」「テストに合格したい」「綺麗に泳げるようになっていたい」と、それぞれが宣言。目標を設定し、半年間、努力していくことを誓った。

 笑顔で耳を傾けた伊藤さんは、一人ひとりの将来の夢など宣言に対して優しく言葉をかけた。「できたって思う自分をイメージして泳いでほしいなと思います。大事なのは楽しむこと」「私も一生懸命サポートしていきたいな」「本当にウイルスがない世界になるといいね」「やる気があれば何でもできます」。子供たちとオンライン上で“2ショット写真”も撮影。たくさんの笑顔が咲いた。

 質問コーナーでは、子供たちがオリンピアンに積極的に疑問をぶつけた。「結婚してますか?」「水泳以外で得意な運動はありますか」「好きな本や漫画はありますか」。和気あいあいとした雰囲気となり、伊藤さんは「結婚してますよ。赤ちゃんもいます」「サーフィンが好きです」「本は好きです。漫画だと『NANA』とか知ってるかな?」と笑って交流した。

子供たちの声に笑顔で耳を傾ける伊藤さん【写真:編集部】
子供たちの声に笑顔で耳を傾ける伊藤さん【写真:編集部】

伊藤さんは小学生にエール「いいプログラムにしていきましょう」

 約2時間に渡ったイベントはあっという間に終わりを迎えた。参加者を代表し、水野咲里さん(小2)は「初めてだったけど、楽しいのでまたやりたいです」と感想を発表。昨年度もプログラムに参加していた吉田壮汰君(小4)も「初めてのオンラインだったけど、前のようにいっぱい喋れてよかったです」と喜んだ。

 最後の閉会式。東京と大船渡の距離を超え、時間をともにした伊藤さんはメッセージを送った。

「本当に大船渡には何年も行っていて、帰るような場所に感じます。いつも大船渡の皆さんは温かく迎えてくれて、みんなに会うのも楽しみです。今回は遠隔になったけど、動画で毎月見ると、意外と泳ぎからみんなの生活ぶりがわかります。練習をどれくらいしてたかな、一生懸命やろうと思ってくれていたんだなというのも泳ぎに表れています。

 水泳は練習の成果が出やすい競技です。私たちも練習を頑張っている時は、練習の成果がレースに影響していたので、普段の練習を凄く大事にしていました。なので、皆さんも普段の生活や練習をしっかりやってくれると、泳ぎにもいい成果が出るかなぁと思います。

 みんなが一生懸命泳いでくれることで、私も凄く一生懸命やりたいと思いますし、本当にこのプログラムに意味を感じていますので、一緒に作り上げていく気持ちで参加してもらえたらと思います。みんなが温かくやっているので、いつも動画を楽しみにしています。上手になっている、なっていないとかではなく、みんなが一生懸命取り組んでくれているという姿勢が一番大事だと思います」

 泳げなくてもいいから一生懸命やることを求めた伊藤さん。最後に「いいプログラムにしていきましょう」と締めくくると、大きな拍手に包まれた。締めくくりにモニターに映る伊藤さんと子供たちが並んで“集合写真”を撮影。伊藤さんは「みんな待ってるね~」とエールを送り、“再会”を約束した。

 コロナ禍で多くのスポーツ機会が失われたが、距離が離れていてもできるオンライン指導。新しい形も定着しつつある。伊藤さんも子供たちが何を学び、成長してくれるか楽しみにしているはずだ。

(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)

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