「怒って帰っちゃう人もいた」 駐車場不足の過去も…群馬に生まれたバスケ82億円アリーナの秘話

高校野球観戦中、松林で偶然対面「そこから太田へ行く話に」
群馬大会3回戦で、桐生南高と市立太田高が対戦。そこに太田移転の端緒があった。キーマンとして阿久沢氏が挙げたのは、当時オープンハウス社長だった荒井正昭氏と太田市の清水聖義・前市長の名前だった。
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「荒井社長が母校の試合を見に行ったら、対戦相手が市立太田で、清水市長も来ていた。偶然、同じタイミングで(球場近くの)松林の中で会ったんです。そこから太田へ行く話になったみたいなんです」
翌2020年にクラブ運営へ加わった阿久沢氏は、構想が形になるまでを間近で見た。「そうなったら、お二人ともせっかちだから(笑)。話が進むのが本当に速かった。2020年には相当進んでいて、2023年にはできてしまった。すごいスピードでした」。
球場脇の松林で交わされた立ち話は、82億5000万円の事業として形になった。建設プロジェクトチームは、オープンハウス、太田市、設計会社で組織された。約40億円に上るオープンハウスグループの企業版ふるさと納税などを活用し、新たな太田市総合体育館が2023年4月に完成。「オープンハウスアリーナ太田」の愛称が付いた空間は、プロ興行時に5000席以上を確保する。
かつて観客が1000人を超えると駐車場が足りなくなったクラブのホームは、新アリーナへ移ると超満員となり、チケットは争奪戦になった。阿久沢氏によると、ホームゲーム1試合の興行には1000万円ほどかかる。チアやDJも含め、試合が始まる前から会場の熱をつくってきた。
完成したアリーナを、プロ興行の舞台としてどう作り込むか。オープンハウスから一任されたのが、吉田真太郎GM(当時常務、現専務)だった。日本のバスケをNBAのような舞台にしたいと考えていた吉田氏のこだわりを、阿久沢氏はこう振り返る。
「ビジョンを大きくしよう、音を良くしよう、光の演出をしようと、ずっとこだわっていました。最初は本当にみんなびっくりして、感動して泣いている人もいました。市民体育館時代を知っている人からしたら、別のゲームみたいな感じだったと思います」
太田は、阿久沢氏が高校教員として最初に赴任した土地でもある。30年以上を経て、クラブ社長として戻ってきた。
「生徒が役所で部長とか課長になっていたり、当時の保護者が街にいたりするんです。ちょっと話をすれば分かってくれる。知り合いがいることは、本当に助かりました。いろんな意味で、つながっていて良かったですね」
高校野球を見に来た2人が、球場脇の松林で偶然出会ってから4年。阿久沢氏が教員生活の一歩目を踏み出した街に、クラブの新たな本拠地が完成した。雨漏りをしのぎ、選手が冷水シャワーを浴びた時代を経て、群馬は9月24日、5000席を超えるこの場所でBプレミア初戦に臨む。
(新井 裕貴 / Yuki Arai)
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