井上尚弥が世界戦通算23KOの世界記録樹立

　ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥（大橋）が4日（日本時間5日）、米ネバダ州ラスベガスのTモバイル・アリーナでWBA世界同級1位ラモン・カルデナス（米国）に8回45秒TKO勝ちした。世界戦通算23KOとし、77年ぶりに歴代最多記録を更新。全てを手に入れても強さを求める姿は「天狗」とは無縁。周囲は驚くばかりだ。戦績は32歳の井上が30勝（27KO）、29歳のカルデナスが26勝（14KO）2敗。（文＝THE ANSWER編集部・浜田 洋平）

【注目】育成とその先の未来へ　野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

　◇　◇　◇

　井上には、何度驚いても驚き足りない。試合1か月前。陣営の大橋秀行会長はやはり驚いていた。

「基本に忠実ですし、練習に貪欲。真面目です。記録や結果を出していると、天狗になってもおかしくない。それがないのが一番凄いところです。まだ肉体的にもぐんぐんと伸びがある」

　高校卒業後のジム入門から13年間。ずっと見守ってきたが、「今の練習量は凄い」と年齢を重ねて激しさを増したという。「心配になる。オーバーワークになってしまうのではないかというくらい」。井上も「紙一重ですよ」と怪我と隣り合わせだと承知の上。元世界3階級制覇王者・八重樫東トレーナーの特別メニュー「ヤエトレ」でフィジカルを集中強化している時期だった。

　高強度の練習は体づくり以外にも効果を発揮する。

「強度の高いトレーニングをやり切ることがメンタルトレーニングになる。ラスベガスで、それもTモバイル・アリーナでやるなら精神的にも強くしないと。脳のスタミナとか精神的な部分も大事になってくるので」

　最強の名を欲しいままにしても追い込めるのはなぜか。井上の取材をしていると、記者からモチベーションに関する質問がたびたび飛び出す。ベガス決戦を翌日に控えた計量時、意外な人物から同じ問いが出た。