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40歳の最年長リーグワン1部戦士が今も戦う理由 企業なら管理職世代、周りが言うモチベに「僕はピンとこない」

ラグビー・リーグワンはレギュラーシーズン終盤戦を迎え、プレーオフ進出、入替戦回避を懸けた順位争いも熾烈さを増している。その中で、静かに偉大な足跡を積み上げている男がいる。ディビジョン1(D1)三菱重工相模原ダイナボアーズのHO安江祥光は、40歳で迎えた今季は4月26日現在で歴代10位の40歳8か月1日の高齢出場を更新し続けている。リーグ側が発表する年長出場記録では歴代10位だが、D1のような“最上位リーグ”では現役最年長という記録だ。企業なら管理職でもおかしくない年代となった今でも、何故現役にこだわるのか。未だに最前線でプレーを続ける戦う40歳の思いを聞いた。(取材・文=吉田 宏)

40歳の今なおリーグワンD1の第一線で戦い続ける安江祥光【写真:荒川祐史】
40歳の今なおリーグワンD1の第一線で戦い続ける安江祥光【写真:荒川祐史】

未だに最前線で戦う三菱重工相模原ダイナボアーズのHO安江祥光の思い

 ラグビー・リーグワンはレギュラーシーズン終盤戦を迎え、プレーオフ進出、入替戦回避を懸けた順位争いも熾烈さを増している。その中で、静かに偉大な足跡を積み上げている男がいる。ディビジョン1(D1)三菱重工相模原ダイナボアーズのHO安江祥光は、40歳で迎えた今季は4月26日現在で歴代10位の40歳8か月1日の高齢出場を更新し続けている。リーグ側が発表する年長出場記録では歴代10位だが、D1のような“最上位リーグ”では現役最年長という記録だ。企業なら管理職でもおかしくない年代となった今でも、何故現役にこだわるのか。未だに最前線でプレーを続けて戦う40歳の思いを聞いた。(取材・文=吉田 宏)

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 夏日のような暑さに見舞われた4月下旬のある日、ダイナボアーズの練習を終えたばかりの40歳が疲労の色も見せずに語り出した。

「確かに引退とか考える人が沢山いる年代ですよね。でも僕の場合は、一日一日の継続だけなんです。朝起きて、今日一日頑張ろうというくらいの感覚で、気付いたら41歳になる年になったんです」

 今年の8月には41歳を迎える安江だが、まだ伝統校を追いかける位置にいた帝京大時代からの明るい性格は、チームの重鎮になった今でも変わらない。入団1、2シーズン目の若手にもイジられる“愛されキャラ”は、チームを超えて多くの選手から慕われ、親しみを込めて「やっさん」と呼ばれる。そんな飾らない性格は、自分自身のラグビープレーヤーとしてのキャリアにも反映される。いつも特別な気負いもなく淡々と“普段着”でプレーを続け、40歳の今季もゲームジャージーを託されてきた。

 4月末までの時点で、今季は7節以降の8試合に出場するが、うち6試合は途中出場。昨秋には日本代表も経験した26歳の李承嚇、入団7年目の28歳宮里侑樹らとのポジション争いを続ける。ラグビーの選手寿命をみると、多くは30代半ばでジャージーを脱ぐのが相場だろう。早ければ20代後半での決断をする選手もいる。プロ化が進む中で、ダイナボアーズでも63人のメンバー中、安江を含めた53人がプロ選手という時代を迎えている。現状では選手寿命が飛躍的に伸びている傾向はないが、安江は黙々と40歳のシーズンを戦い続ける。

 リーグワンの年長出場記録をみると、別表にある通りPR久富雄一(元日野レッドドルフィンズ)の45歳5か月10日が歴代最年長出場記録。安江もあと5シーズン頑張らなければ辿り着けない金字塔だが、その一方で久富の記録は2023年のリーグワン2部に相当する「ディビジョン2(D2)」で達成したものでもある。他の歴代記録も、リーグワンの前身であるトップリーグ(TL)やD2や入替戦で達成されたものも含まれている。

 ちなみに、リーグ側では歴代記録についてはTLなど過去の大会も含めたデータを採用している。広報グループの説明では、3部制のリーグワンはD1-3すべてが同じ主管団体による運営のため全てのディビジョンを記録の対象にしている。TLに関しては、同リーグが日本協会主管だったのに対して、下部リーグのトップイースト、ウェスト、九州、チャレンジリーグなどは主管協会が異なる(関東協会等)ため別大会として記録の対象外としている。

 その中で、安江はリーグワンの記録上は歴代10位だが、「最上位リーグ」という条件だと、歴代5位に跳ね上がる。別表では★印を付けた最上位リーグだが、表記以外にトンプソンルークが22年5月1日に達成したD1 S東京ベイ戦の41歳15日(歴代7位)も含めた順位だ。現役選手では4月30日に今季限りでの引退(社業専念)を発表したD2花園近鉄ライナーズのLO松岡勇に次ぐ2位だが、D1での記録では最年長という偉大な足跡を残してきた。リーグワンが従来のリーグ以上に、そしてシーズンを重ねる毎にレベルを上げ、海外トップ選手が続々と集まっている現実を考えれば、この時代に40歳を超えた今も公式戦に出場し続けているのは賞賛に値する。

 余談にはなるが、別表では歴代9位の伊藤剛臣だが、これはTL神戸製鋼時代の記録だ。伊藤はその後、リーグワンでは記録の対象外とされるトップチャレンジリーグの釜石シーウェーブスでもプレーを続けているが、このチームでの出場記録も含めると46歳を超えてプレーを続けている。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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