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40歳の最年長リーグワン1部戦士が今も戦う理由 企業なら管理職世代、周りが言うモチベに「僕はピンとこない」

安江の通算150キャップ達成の際には記念撮影も行われた【写真:荒川祐史】
安江の通算150キャップ達成の際には記念撮影も行われた【写真:荒川祐史】

周囲が語る安江の存在感「40歳の選手があんなジャッカルをしてくれれば…」

 自分の強み、どんなプレーを磨いていくかを理解しながらの挑戦を続けているのがよく判るコメントだが、チームを率いるSH岩村昂太主将は、安江のラグビーに取り組む姿がチームにもたらすものを期待する。

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「自分の必要なことをグラウンド内外でやってくれていると思います。リカバリーだったり、体の調整のところはすごくて、そこが40歳までやれている原因じゃないかな。出場すれば自分の仕事をしっかりやってくれるし、たまに走れてないときがあってもジャッカルとかすごく上手いし、嗅覚を持っている。そんな姿を選手たちに示してくれれば、僕は一番嬉しいですね。40歳の選手が試合であんなジャッカルをしてくれれば、そりゃ皆やる気になるし、背中で見せてくれるのがおそらく安さんにはいいと思うので、これからもそういのを見せてほしい」

 まさに背中でチームを引っ張る存在でもある安江だが、40歳の今でも国内トップステージでプレーできる理由も、こう説明する。

「ウエートトレなんかもそうですが、ウチのS&C(ストレングス&コンディショニング)コーチが、僕にもかなりハードワークをさせてくる。ラグビー界全体の体を鍛える環境、ノウハウが、僕らが若手の頃からはガラッと変わりましたよね。さらに厳しくなっている。そこに、若い選手と一緒だと、自分が勘違いしてちょっと若返ったように感じてやれています。スピード系のメニューはすこし落ちても、ウエートトレの数値とかは落ちているわけじゃなくて、パワーが落ちているという感覚もない。むしろパーソナルベストはちょっと上がってるんじゃないかな。自分を成長させてもらっているという感謝の気持ちがすごく大きいですね」

 世界のラグビーがプロを容認したのは1995年。そこから戦術だけではなく、個々の選手のパフォーマンスを上げるためのトレーニング方法やノウハウが考案され、他競技や研究機関から流れ込んできている。安江も10年、20年前なら既に引退していたかも知れないが、ダイナボアーズで取り組まれているトレーニングメニューが選手寿命を確実に伸ばしていることも実感している。

 それに加えて、未だに安江が現役選手として存在感をみせるのが20年近い国内トップレベルでの経験値だ。日本IBM(ビッグブルーズ八千代ベイ東京)、神戸製鋼(現コベルコ神戸スティーラーズ)と、本格的な強化を始めたばかりの若いチームから日本選手権7連覇等の成熟したチームという、キャラクター、文化が大きく異なるクラブでの経験が安江の選手としての幅を広げている。

「IBMでの1、2年目はがむしゃらに、ひたすら頑張っていただけでした。けれども、代表に選んでもらえるようになって、それから神戸製鋼に行って、そこで色々な先輩がいて、色々な経験をさせてもらって学んだものは大きかったと思います。そこから(当時)ディビジョン2の相模原に来て、もう一度自分の若い頃のことを思い出させられた。原点に戻って来たというところが僕の中では大きかったと思うんです」

 本職はHOだが、PRでもプレーしてきたこともスクラムの駆け引きなどではプレーの幅を広げるために役立っている。そんな経験値から、安江はいまのダイナボアーズをこう評価している。

「良くも悪くも、本当に全員が真面目だし、いい人間しかいないんです。でも、やはり勝負の世界って、いかにギリギリのところで戦い、勝っていけるかが大事になる。何センチメートルでも相手を押し込んだり、攻防のところで嫌らしく、しつこくプレー出来る。そういうスパイスのような部分が、最終的な勝負に伝わってくるのかなと感じているんです。確かにいい人間であれというのはあります。でも、やはり勝負の世界では、対戦相手の最高の誉め言葉は『アイツ嫌な選手だよな』ですから。なので、そういうプレーヤーがいる、そういうプレーが出来るように、自分の幅を広げられる選手が増えれば、チームは格段に変わってくるかなと感じています」

 持ち前のスピードは間違いなく落ちてきてはいる。だが、その中でも自分の判断力、状況を読む能力を生かして、いまでも巧みなジャッカルを見せ続ける姿に、この40歳のラグビー選手の足跡と矜持が滲む。シーズン毎にベンチスタートが増える中で、途中出場という役割もしっかりと認識している。

「試合をベンチから見ているところで、例えば相手が優位なら、ゲームのどこで負けているのか、劣勢なのか、どうすれば良くなるのかと常に考えています。勝っているなら、どうすればリードを広げられるか、もっと相手に圧力を掛けられるかとかね。スクラムについても、同じ控えのフロントローと一緒にみながら、こう押してみよう、こう重圧をかけようと話しています。ゲームに出ていると混乱しちゃう部分も多いですけれど、やはり落ち着いて『いまのスクラム、どうだった?』と聞くとああだった、こうだったという意見が出くる。じゃあ、それをゲームに出たらやっていこうと話したほうが、出場した時に早くゲームにコミットしていける。しょせんスクラムは1人だけで組むもんじゃないですからね」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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