「今、凄く危機感を抱いています」 もがき悩む陸上・田中希実が真夏のパリで破る「本当の壁」【陸上セイコーGGP】
「人によって限界と感じるところ。掴みどころのない壁。そこに今、来ている」
引き出しを増やすため、父・健智コーチと試行錯誤。練習方法を変え、毎年のように「ハマる感覚」を覚えた。昨年ブダペスト世界陸上は5000メートルで大幅に日本記録を更新し、8位入賞。「どういう練習が自分を信じられる練習なのか」。今年も最適解を見つけようとしてきたが、掴み切れていない。
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額に流れる汗。20人ほどの記者に囲まれ、自分の頭を整理するように話した。
「なんだろう、今は壁に当たっていると言いますか、今までは本当の意味での壁には当たっていなかったというか……。怒りをぶつけたら打開できていたことが、今は怒りをぶつけるだけじゃ打開できないところに来てしまっている。
なんだろうな、限界という言い方はおかしいんですけど、人によっては限界と感じてしまうようなところ。目に見える壁じゃなく、掴みどころのない壁に当たってしまっている。そこに今来ているんじゃないかなと思います」
今後は米国で5000メートルに出場し、欧州も転戦。その後はケニア合宿で世界の猛者に揉まれ、6月末の日本選手権を迎える。5000メートルは参加標準記録14分52秒00を突破すれば内定。1500メートルは同4分02秒50を突破し、日本選手権優勝で五輪切符が手に入る。
「このまま行くと、海外のレースを戦える力じゃない。レースに絡んでいけるかどうかもわからない。そこが宙ぶらりんのままケニアに行っても、それなりの追い込みになってしまう。今、凄く危機感を抱いています。
客観的に見れば今までの自分と比べた時はまずまずですが、オーストラリアはすでに4分を切っている人が5人もいる。世界で争いたいと言っている時に、もし自分がオーストラリアや米国の選手だったらそもそも代表にもなれないし、草レースでも何十番になってしまうところにいる。
過去の栄光を追いかけるんじゃなく、自分の新しい感覚でタイムを出したり、勝ったりするのがやっぱり打開策。でも、タイムを出す、勝つこと自体がもう打開している状態。だから、練習の時点で気持ち的には打開している状態でレースに臨まないといけない」
悩み苦しみながら大舞台を迎えるのは、もはや近年の流れ。昨年はブダペストで殻を破ってみせた。パリのトラックも現状打破の舞台になるはずだ。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)