[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

井上尚弥と戦うネリに告ぐ 日本人は絶対に忘れない、「どす黒い憎悪」が渦巻いた山中戦の国技館

ネリ戦後に控室で引退を表明した山中氏(左)、右は帝拳ジム・浜田剛史代表【写真:産経ビジュアル】
ネリ戦後に控室で引退を表明した山中氏(左)、右は帝拳ジム・浜田剛史代表【写真:産経ビジュアル】

試合後に狂喜乱舞するネリと陣営、なぜ……

 真っ黒な両国国技館の天井。目に見えないはずの憎悪が、リングの上に重く、どす黒く渦巻いていた。セミファイナルで勝利した岩佐亮佑も物々しい空気を感じていた。

【注目】育成とその先の未来へ 野球少年・少女、保護者や指導者が知りたい現場の今を発信、野球育成解決サイト「First Pitch」はこちら

「国民が『あいつを絶対に倒せ』という雰囲気。山中さんのために応援団がヒリヒリしていた」

 メインイベントは入場からネリへの罵声が殺到。「偽物王者!」。8500人の四面楚歌。殺意に似た怒りがぶつけられた。

 山中さんが無念を晴らし、王座に返り咲いてほしい。その思いで見守ったが、4度のダウンを奪われる2回1分3秒のKO負け。沈黙した会場にネリ陣営の奇声だけが響く。リングでメキシコ国旗が揺れた。肩車され、狂喜乱舞するネリが理解できなかった。

 

 なぜ、喜べるのか。

 

「俺は無敗を守った。ヤマナカから恐怖が見て取れた。だから、容赦なくパンチを打ち続けた」

 

 静まり返った国技館の地下通路は、非常口を示す緑の光しかない。闇の中からむせび泣く後援会の女性の声が響いていた。長年、山中さんを取材してきたベテラン記者も涙を拭っていた。「こんなの、あんまりだよ……」

 控室で行われた会見。日本の名王者はグラブを吊るした。「これがもう、最後ですよ。これで終わりです」。目を腫らした神の左。穏やかな口調とは対照的に、帝拳陣営も、報道陣もやるせなさに満ちていた。

 控室の前にいた村田諒太は怒っていた。山中さんとは南京都高(現・京都廣学館高)と帝拳ジムで後輩。「体重が重い相手と試合をするのは僕だって怖い。でも、逃げるわけにはいかない中で戦った山中先輩はカッコ良かった」。感情的になり、記者たちに向かって喧嘩越しのようにまくし立てた。

「確かに山中先輩は減量がきつかったし、耐久力は落ちていた。でも、相手は1階級上の選手ですよ。ドーピングもそうだけど、ルールを厳正化しないとダメ。二度と(試合を)できないとか。そうしないと、どうやったってしこりが残る。民事訴訟を起こせるくらいにしないと。賠償責任を負わせるとかね。そこまでやらないと変な流れになる」

 山中さんが目に入った途端、涙を堪えながら挨拶していた。

 ネリがベルトの代わりにファイトマネーを持ち帰って6年。一度受けた処分が解除され、再び日本に戻ってきた。2024年5月6日、舞台は東京ドーム。迎え撃つのは世界のボクシング史に名を残す、日本の国民的ヒーローだ。

1 2 3
W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA Jleague
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集