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「このままでは世界と戦えない」 2度目の陸上MGC2つの考察、一発勝負の好影響と五輪本番への疑問

水泳界とも共通している「一発勝負」の難しさ

 ただ、一発勝負が五輪本番の好成績につながるかといえば、疑問も残る。前回大会で出場権を手にした男女4選手は、いずれも東京五輪で下位に低迷。男子トップの6位に入った大迫も、女子で4大会ぶりに入賞(8位)を果たした一山麻緒も、MGCでは2位以内に入れず、3枠目で代表入りした選手だった。1大会だけの結果で判断はできないし、代表になって満足したわけではないだろうが、東京五輪ではMGC組は活躍できなかった。

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「一発勝負」の難しさは、日本水連の強化トップだった上野広治氏も口にしていた。04年アテネ五輪前から採用してメダル量産につなげたが「本当に世界で戦う気持ちがある選手が争わなければ意味がない。実力があって意識も高い選手がそろったから、うまくいっただけ。決してベストだとは思っていない。選手のレベルが下がれば、見直さないと」と。

 東京五輪以降、競泳界は一時の勢いに陰りが見えている。世界と戦うための選考会が、代表になるためだけの選考会に。世界舞台を前に「(選考会が)今年一番の目標でした」と言われると「一番はこの後」と突っ込みたくもなる。日本代表になったことで満足している(ようにみえる)選手がいる状況に、選考方法の見直しを求める声もあがる。

 同じタイム競技とはいえ、マラソンと競泳では条件は違う。単純な比較はできないが、必ずしも「一発勝負」だけがベストだとはいえないのだ。分かりやすく、公平。選考方法として素晴らしいと思うからこそ、MGCを「ゴール」にはしてほしくない。

「五輪までに、さらなるレベルアップを」とパリ行きを決めた選手たちは本番を見据えた。早期に代表を決めれば、五輪を想定したトレーニングを積む時間もできる。思い切った強化も可能だ。透明性も高く、選手、指導者だけでなくファンまで納得しやすいMGC。その価値を高めるためにも、ここで代表を決めた選手にはパリで活躍してほしい。活躍できるように日本陸連も最大限のサポートをしてほしいと思う。

 24年のパリ五輪、25年の東京世界選手権へ、日本陸上界は勢いに乗っている。8月の世界選手権では、女子やり投げの北口榛花が優勝。トラック、フィールドともに世界で戦える選手が増えてきた。だからこそ、陸上の「花形」でもあるマラソンの復活は重要。ケニア、エチオピア勢の活躍などで世界との差は広がる一方だが、少しでもその牙城を崩すことができれば、かつてのような輝きが戻ってくる。

(荻島 弘一 / Hirokazu Ogishima)

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荻島 弘一

1960年生まれ。大学卒業後、日刊スポーツ新聞社に入社。スポーツ部記者としてサッカーや水泳、柔道など五輪競技を担当。同部デスク、出版社編集長を経て、06年から編集委員として現場に復帰する。山下・斉藤時代の柔道から五輪新競技のブレイキンまで、昭和、平成、令和と長年に渡って幅広くスポーツの現場を取材した。

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