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73歳名将が女子ラグビー初指導の理由 大学日本一6度、10年ぶり指導で「ハッと気づかされた」

新天地でも期待される誰もが分け隔てない組織作り

 勝負師としての旺盛な情熱は、学生最強チームを鍛えた時代と変わらない。当時は、息子のような選手たちと一緒に練習グラウンドに入り込んでの指導が特徴的だった。多くの指導者は、練習をグラウンドの外やプレーしている選手の周辺から見ていることが多いが、関東学院大では実戦形式の練習で春口監督自らレフェリーを兼ねながら、間近で選手に教え込むスタイルにこだわった。学生たちの中に飛び込んで、まるで取っ組み合いをするように選手1人ひとりに、それぞれの置かれた状況で何を判断して、どう動けばいいのかを、まさに手取り足取りで理解させ、理想のチームスタイルを創り上げた。

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 だが、新天地は学生最強チームに上り詰めた関東学院大とは違い、2011年に誕生した、まだ歴史の浅い成長期にある。昨年の7人制シリーズ「太陽生命セブンズ」熊谷大会でようやく初優勝を果たし、シーズン総合3位と、これから頂点に挑んでいく段階だ。

 チームの生みの親でもある代表を務めるのは、母体となる戸田中央メディカルケアグループの横川秀男理事長。学生時代も昭和医大でラグビーに打ち込み、医師、医療法人グループのトップとして尽力しながらも、母校の監督を務めるなど楕円球に情熱を注いできた。親交があった慶應義塾大元監督の故・上田昭夫氏の協力もあり2011年に立ち上げたチームが昨季ようやく優勝を手にしたことで、もうワンステップ進化させたいという思いで同じ横浜で常勝チームを率いた指揮官が招かれた。

 春口監督に求められるのは、第一に勝てるチームの育成だ。男子の大学チームとは様々な違いはあるが、関東学院黄金時代のように選手1人ひとりが緻密に役割を遂行して理想のラグビースタイルを築き上げ、常に優勝を争うようなチームをどう育てていけるのか。その手腕に注目が集まる。同時に期待されるのは、古巣でもチームの個性になっていた、明るく、誰もが分け隔てなく人間関係を築ける組織作りだろう。

 横浜TKMの置かれた環境は、女子チームの中ではユニークであり、恵まれている。7人制、15人制を問わず多くの女子チームが、いわゆるクラブチームという形態だ。一部のクラブでは仕事を斡旋するなど選手をサポートしているが、自力で就職先、バイト先を見つけてラグビーと両立させている選手も多い。横浜TKMの場合は、母体が医療法人のために選手が病院や介護施設の職員として働きながらラグビーに打ち込む環境がある。医療関係の資格を取得する選手もいる一方で、外国人選手の加入もシーズンごとに増え、今季はフィジー、ニュージーランドから6人が揃う。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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