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創部64年目でなぜ躍進? 大学選手権初出場、東洋大ラグビー部が貫く“凡事徹底”の精神

スクラムを見守る齋藤主将(右から2人目)。横は学生最長身211センチのLOジュアン・ウーストハイゼン【写真:吉田宏】
スクラムを見守る齋藤主将(右から2人目)。横は学生最長身211センチのLOジュアン・ウーストハイゼン【写真:吉田宏】

部員1人ひとりに手渡しする「凡事徹底」の本

 指揮官のそんなチーム運営から、就任時から部員1人ひとりに手渡しているものがある。

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『凡事徹底』という本だ。

 自動車用品チェーン「イエローハット」の創業者・鍵山秀三郎の著書だが、自身で立ち上げた事業の成功のなかで清掃活動などの“凡事”、つまりささいなこと、ありきたりなことをやり遂げることの大切さが書かれている。福永自身が感銘を受けた本だ。これが学生たちにとって、東洋大ラグビー部で4年間プレーするための、そして卒業後の人生のヒントになると考えている。

「今年の1年生にも渡しています。感想文も提出させていますよ」

 東洋大ラグビー部で初の大学選手権にチームを率いる主将となった齋藤も、そんな福永イズムを実体験してきた。

 まずは、齋藤が東洋大を進路に選んだ運命からだ。齋藤の母校・目黒学院高を率いる竹内圭介監督は、福永監督とは大学同期の仲。福永が監督就任に伴い、竹内監督のもとを訪れたのが運命だった。

「目黒学院の試合を見に行ったというよりは、竹内監督に挨拶に行った時でした。監督と話していたら、目の前で彼がタックルをしていたんです。大きいのに、ああいうタックルをするんだと思いましたね。そのタックル一発だけですね。その後は、怪我ばかりしていましたから。1回しか見ていなかったけれど、見ずにタックルいける人、待たずにいける人だなと決めました」

 今やラグビーも緻密な戦術の下、冷静な判断力や準備されたプレーを忠実に遂行することが選手に求められている。だが、そんな構造のなかでも、瞬時の判断、むしろ閃きという次元で、タックルなどに反応できる選手がどうしても必要なのも事実だ。三洋電機で揉まれるなかで、指揮官も、齋藤のような選手が15人の中で必ず必要だと感じ、1年生から試合で起用してきた。

 タックル一発で誘われた側の齋藤だが、監督同士の繋がりもあり目黒学院の先輩も進学していたことで入学を決めている。主将として今季までのチームの成長を、どのように見ているのだろうか。

「自分たちが入学してから、ここまで大きく練習が変わったわけではない。でも年々チーム力、チームが一丸になっている力がどんどん強くなっていて、トレーニングに対する意識だったりが、メンバー外の選手も含めてレベルが上がってきた。やっていること自体は変わらないので、たぶん影響を与えているのは、4年生の力が大きいのかなと思います。本当に毎日100パーセントの力で練習してきてくれた」

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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