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優れたサッカー選手が生まれる環境とは? 本田、長友、家長…切磋琢磨した集団の強さ

集団を「エリート化してはいけない」

 そして北京世代の面白さは、天才という称号で一時、もがいていた家長昭博が長いキャリアを経て、JリーグMVPを獲得し、川崎フロンターレの主力として今も活躍している点だろう。

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「エリートとして扱われるギャップはめちゃくちゃありましたよ」

 10年ほど前のインタビューで、家長はそう告白していた。

「サッカー人生を振り返って上手くいってへんことの方が多かったですよ。大分(トリニータ)の2年目なんか、何をやっても上手くいかずへこんでいました。そんな大分時代も、チームには能力が高い選手が多かったから切磋琢磨できたし、怪我をして挫折を経験したからこそ、自分は人として成長できたんかなと思います。もどかしい時もありましたけど、『絶対乗り越えられる』という自信はありました。最後は負けへんで、って」

 挫折を力に変換できた世代と言える。もっとも、その再現性は難しい。

 一方、東京五輪世代が突き抜けたのは、何人かの選手が早くから海を渡って、世代全体をけん引してきたからだろう。久保建英、堂安律、冨安健洋はJリーグに安住することなく海を渡って、一つの指標を示した。そして彼らに“負けじ”と、他の選手たちが食いついていったのだ。

 そこで一つ注意するべきは、「集団をエリート化してはいけない」という点だろう。何も成し遂げていない世代や選手たちをことさら持ち上げると、そこで成長、進化はぴたりと止まる。そして挫折に弱さを見せる集団、選手になり果てるのだ。

「選手同士、お互いが殴り合うくらいがいい」

 それが強化における一つの基準だ。

 チーム単位の育成で必要になるのは、「競争環境」と言われる。ふるいにかけられている、という緊張感がなく、自分たちは一番だ、というおごりだけが大きくなった集まりに未来はない。常に力が通用するかしないか、の環境を作り出すことが、育成強化では大事だ。

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小宮 良之

1972年生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。トリノ五輪、ドイツW杯を現地取材後、2006年から日本に拠点を移す。アスリートと心を通わすインタビューに定評があり、『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など多くの著書がある。2018年に『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家としてもデビュー。少年少女の熱い生き方を描き、重松清氏の賞賛を受けた。2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を上梓。

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